第三話
「クルミさん!敵はどこに!?」
大きな音がなり、その音源がどこなのかをクルミさんに聞く。
クルミさんは動じることなく、冷静に状況を分析していた。
こういうときに目を奪われているのは自分でもどうかと思うけど、クルミさんのパープルの色の目、きれいだな。
「多分この感じからしてわたしたちがちょっと前にいたとこだよ!」
俺達がさっきいた場所は7階層なので、5階層くらいってことか……。
そこら辺は、まだ新米の探索者でも結構行けるので、もしかしたらもうすでに……
いや、今は一刻も早く助けに行かないと!
「クルミさん!あれって…」
「うん。あれはゴブリンだよ。けど、強化されてSSSランクになってるね…。」
『ほんとにSSSランクだ』
『気配がおかしいしな』
『おふたり、無理だって思ったらすぐ逃げてね【栗田アワ】』
『アワ様も来た!?』
『アワ様!!』
5人のSSランク配信者のうちのひとり、栗田アワさんも来たらしいが、そんなことに構っている暇はない。
今は、目の前の敵と戦うことが最優先。それ以外はなにもないよ。
「セイト君!時間稼ぎするからね!私に付いてきてるってことは、覚悟はあるんだよね?」
「はい!じゃあ、防御魔法でいいですね?」
「うん!せーの!」
「「マホブロック!!」」
『す、すげぇ…』
『こいつら、攻撃抑え込んでやがる…』
『セイトが負けてない、だと!?』
『いけー!』
『いけー!』
俺とクルミさんは、力を合わせ、ゴブリンの攻撃を食い止めようとする。
初めの方は、それこそ上手く行ってゴブリンを足止めすることに成功していた。
その間に、探索者たちはだいたい脱出することができ、残ったのは俺とクルミさん。
「クルミさん!俺たちもそろそろ…」
“ヴオオオオオオ!!”
大きな、地割れの音。それを聞いた瞬間、クルミさんは、ふき飛ばされてしまった。
「クルミさん!!大丈夫ですか!!」
「……私は大丈夫だから…セイト君だけでも逃げて…」
『くーちゃん!』
『くーちゃん!!』
『早く、逃げてくれぇ…』
『星斗は大丈夫なのか…?』
ちっ…!こんなことになるなんて。勝つことはできなくとも、クルミさんの力であれば撤退くらいは出来ると思っていた…。
……仕方ねぇか。
「クルミさん。《《下がっててください》》」
「えっ…?」
「言いましたよね、《《俺が守るって》》」
『え?』
『セイト死ぬぞ?』
『やめてくれぇ……』
『こんなとこ見たくない…』
「はぁ…!よく聞け!ゴブリン!俺が、5人目のSSSランク探索者、睦月星斗だ!」
“ヴヴゥ…?”
こういうときは、早期決着だって相場が決まっている。ゴブリンは、攻撃力は高いが動きが遅い。ここは、速さで勝てるようにして……。
「エア、スラッシュ!!!!」
最強、最速。自分のもてる力をありったけゴブリンに叩き込む。
“ぐぁぁあ!!”
俺の全力の一撃は、見事にゴブリンの首を斬ることに成功した。
ということはつまり、俺たちの勝ちだ!
『SSSランク探索者……』
『まじかよ…』
『すげぇぇ!!』
『よくやったよ!』
『ありがとう…!【¥50000 くーちゃん信者】』
『凄かった。感動した』
『やべぇ…。これ、まじの伝説だろ…』
「あ、クルミさんは…?」
「大丈夫だよぉ!ありがとう!!本当に!私を助けてくれて!大好き!!」
「え!?大好き…?」
「あ、違う違う!!とりあえず外でよ?」
『公開告白!?』
『まじ!?』
『草www』
『吊り橋効果だろ?だよな…?』
『ってか、だよ』
『やばくないか?』
『5人目のSSSランク探索者がいつも俺たちが見てた人だったなんて。』
ドロップアイテムは忘れず拾って、クルミさんに連れられて、外に出てみると…。
「「「「本当にありがとうございました!!」」」」
そこには、たくさんの探索者たちが。
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