七月二日 協力依頼メール
前略。
ますますご活躍のこととお慶び申し上げます。
当方は霊能斡旋事務所の所長、高上と申します。
この度は突然のメールを送ってしまい、実に申し訳ございません。
さて、さっそくですがお願いしたいことがあります。
すでに業界中の噂になっているため、ご存知かもしれません。
現在わたしが取り掛かっている怪異事件の解決について、貴殿のご協力をお願いしたいのです。
これまでの事件の進展を添付ファイルに記載しましたので、もし宜しければご一読ください。
そのうえで、もしもこの事件の解決に向けてご協力いただけるのであれば、その旨をご返信いただけますと幸いです。
以上、何卒よろしくお願い申し上げます。
送信:七月二日。
◇◇◇
【添付ファイル:案件概要.txt】
都内の進学校である明伊敷高校の生徒が落雷により死亡する事件が発生。
今年の二月から五月までの四ヵ月にかけて、連続で犠牲者を出している。
警察は事故として処理しているものの、五月時点で被害者のクラスメイトの保護者が本件を弊事務所に霊能案件として調査依頼した。
弊事務所は相応の準備を整えて対処したものの新たな犠牲者を出してしまい、同時に斡旋した霊能力者を失う結果となっている。
これを受けて弊事務所は、本案件を極めて強力な怪異によるものと認定。
事件解決に向けて、より多くの協力者を募ることとした。
■事件の概要
・二月二十日(月)、明伊敷高校の生徒、矢部冴也が帰り道にて落雷で死亡。
・三月二十二日(水)、同高校の嘉手納麗奈が帰り道にて落雷で死亡。
・四月二十日(木)、同高校の阿倍晴太が帰り道にて落雷で死亡。
・五月十日(月)、依頼人が弊事務所に本事件の調査および解決を正式依頼。
依頼人が指定した三名を護衛するため、弊事務所にて三名の護衛を手配。
・五月二十日(土)、同高校の八女揚羽が部活の帰り道にて落雷で死亡。
護衛にあたった霊能力者一名が、現場に右腕を遺して行方不明となった。
・以降、七月二日の現時点まで新たな事件発生は無し。
毎月発生していた事件がなぜ六月に発生しなかったのかについては現在、仮説を精査中。
■分かっていること
・警察関係者によると、いずれの落雷についても気象庁の観測データに存在しなかったとのこと。
このことからもただの自然現象ではないと推測されるが、詳細は不明。
・落雷死事件は、すべて新月の日に発生した。
また、いずれも被害者の帰り道の途中に発生している。
これらの共通項は、怪異の正体に関係するものと推測されるが詳細は不明。
■最後に
残る護衛対象は、二名。
これ以上の犠牲者を防ぐべく、対策会議を七月九日に開催予定です。
事件の詳細についても、その場にてお話いたします。
事件解決にご協力いただける場合はメールにてその旨ご返信ください。
会議の開催場所を追ってご連絡いたします。
また本怪異に関する解決策などに心当たりのある場合は、情報提供のほどよろしくお願いいたします。
以上。