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全7話で完結まで書き上がっておりますー

◇◇◇




 お父様が言った。


「フラン、本当にやるのかい?」


 お父様は本当に甘々で心配性だ。

 私は既に準備は終えている。


「はい、お父様。私、やられたら絶対にやりかえしますの」


「お前というやつは……」


 父が苦笑いを浮かべた。

 けれどお父様、そんな顔しても駄目ですよ。


「お父様からの教えです」


 だってそもそも、『やられたらやり返せ。躊躇いも情け容赦も無用だ』というのは、伯爵家の当主である父からの教えだ。


 今日、学園卒業前の大イベントである王国主導の夜会がある。

 そこで私は、婚約者であり、この国の王太子でもあるリュド様より婚約破棄を言い渡される。


「それではお父様、行ってまいります」




◇◇◇




 王宮に着き、当たり障りなくその場で過ごす。

 けれど、周囲の好奇にまみれた視線が私に向けられているのを肌で感じる。それもそのはず、私の婚約者であるリュド様が、私ではない別の女性を側に侍らせ、誰が見ても親しげに振る舞っているのだから。けれど結構。そういったふざけた行為も今日で終わる。


「フラン様っ」


 呼ぶ声の方を向くと、柔和な笑顔があった。


「エドガー様ではございませんか」


 彼はリュド様とよく似ている。それもそのはず、エドガー様はリュド様の一つ下の弟なのだから。


「フラン様……大丈夫ですか?」


 彼が眉を下げて私へと問うた。


「何がでしょう?……と尋ねるのは野暮なのでしょうね」


 彼の言いたいことはわかる。婚約者からは蔑ろにされ、多くの者の好奇の視線に晒されて平気かと言っているのだ。


「大丈夫ですわ……と胸を張って答えられたら良いのですが、あいにく私も、それほど強くはないみたいです」


 私の返答に、エドガー様が面を伏せた。


「ごめんなさい……フラン様……僕が、僕がこうなる前に、クラリッサ嬢や兄さんの暴走を止められていたら、今頃こんなことには───」


「やめてくださいまし。この件(・・・)に関してはエドガー様に非はありません。だからそのような顔をしないでください」


「でもっ! 僕が非力だから……」


 エドガー様が顔に手を当てくしゃりと拳を握りしめた。


「僕がフラン様の婚約者だったなら、絶対にフラン様にこんな苦しい思いはさせないのに……それに、僕なら、絶対に、絶対にフラン様を幸せにしてみせるのに……」


 彼は悔しさを滲ませた顔で、言い切った。


「エドガー様、そのようなことを言ってはいけません。私達の婚約は国が定めたものです……ですのでいくらエドガー様でも、その発言を誰かに聞かれたら……」


「ごめんなさい……」


「構いませんわ」


 そう。もはや彼が何を言おうが、そんなものは些事だ。

 だってこれから───


「みんなっ! これからみんなに重大な発表があるっ!!」


 離れた所にいたリュド様の声がホールに響き渡った。

 聞く者の心を揺さぶる、自信に満ち溢れた声だった。


「兄さん……」


「……」


 私とエドガー様も会話を中断し、リュド様の方へと視線を向けた。


「私は、ここで宣言する」


 彼の視線が、私を捉えた。

 そして、リュド様が周りを見渡すようにして声を張り上げた。


「この私───リュド・トロット・ヨーハン・フォン・ウィトゲンシュタインは、フランチェスカ・イズ・フォン・フリーデンとの婚約をこの場をもって破棄する!!」


 先程とは比較にならないほど大勢の視線が私へと向けられた。

 エドガー様が、蒼白で心配げな顔で私を見つめた。

 大丈夫。大丈夫よ、フランチェスカ。

 ここからが、勝負だから。






最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

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