【そのろく】電池に、振動(ゆれ)る
くしゅほろ。の500文字シアター。
今日のお題は"電池に、振動る"。
プレゼンターは"小野 妃和"です。
イメージを巡らせて、おたのしみください。
私の中には、あとどのくらい電池があるだろう。
種類問わずいつかは訪れる終わりの瞬間に、意識しはじめたのはいつの頃だったかな。
携帯電話もゲームも扇風機もすべては機械で、いつかは終わりが来るんだと、あるところの異変に連鎖する形で気づかされる。
コーヒーを片手にニュース番組を観ている朝7時。
仕事場での難題に追われ、その身を削る昼2時。
解放された一方、移動先でやる事があると気づいた夕方5時。
1日かけて溜まった疲れを癒やしては、待ち望んだ自由に心ゆくまで沈む夜9時。
代わり映えもなく続く日々の中、ある日の夜道でふと呟いた
「これから先も、この繰り返し?」
"機械じゃないのに"
この世界の全てには種類問わず、かならず終わりが訪れる。
正確な寿命なんて誰にも分からないのに、意識しはじめると気になって仕方なくなってしまう。
「あと、どのくらい電池は残っているのだろう」
足を止め、震えだす右手に視線を落とすと、一瞬だけあがった口角を最後にふらついた身体はコンクリートの壁へと背中を預けた。
力が入らないというのに、なぜだか薄れゆく意識を強く感じる。
…。
もし、もし私の電池が切れたとして
その中身は、果たして交換してくれるのかな。
本日のシアタープレゼンターは19歳、大学生として日々を送っている"小野 妃和"。
毎日途切れることなくやってくる課題に立ち向かいつつ日々を過ごしていると、ある日の夜、どこからか聞こえてきた会話から「電池」を意識し始めた彼女。
使っているものがほぼすべて電池ありきであることに気づいた彼女は、連鎖するように「人間にも電池があるのではないか」と考えはじめます。
怒られて、謝って、書いて、喋って、案内して、笑って、泣いて、叫んで。
途切れることなく訪れる日々に力を割いた帰り道。路上で疲労から身体がふらついたとき、彼女は自分の中にある、電池の終わりを意識しました。
"機械では、ないのに"
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今回のおはなしも、お楽しみいただきました皆様へ、ほんとうにありがとうございました。
不定期更新の500文字シアターですが、次回もよろしくお願いします。
それでは、またどこかでお逢いしましょう。くしゅほろでした。