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RADIOPARSONALITY  作者: 九JACK
1/7

結局今年もやってしまう夏ホラ。

 あなたはいじめを受けている中学生です。生きる意味を見出だせず、世を儚もうとさえ考えています。

 門限を破り、やってきた山の中であなたの目の前に現れたのは奇妙なものでした。

 今時持っている人などいるのかも怪しいラジオです。そのラジオからはジジ……ジジ……と時折ノイズが聞こえます。

 不気味に思いながらも、山を登って疲れたあなたはそのラジオが乗っている切り株に腰掛けました。ラジオは誰かの忘れ物かもしれません。取りに来るかもしれませんし、来ないかもしれません。どちらでもいいのです。少し休めれば。何か目的があって山を登ってきたわけではありませんでしたから。

 あなたが切り株に腰掛けると、ノイズばかりだったラジオが突然クリアな音声を出します。

「今宵も始まるミラクルナイト! 曇った夜空にシューティングスター! どうも、ラジオパーソナリティです! 元気かな?」

 誰に聞いているのだろう、とあなたは思いました。テンションの高いラジオパーソナリティに軽くドン引きです。とはいえラジオパーソナリティやDJはこんなものでしょう。

 元気かい、と聞かれて、とても元気ではないわ、とあなたはぽつりとこぼしました。

 すると、変なテンションだったラジオパーソナリティがこう言うのです。

「どうしたの? 何かあった?」

 パフォーマンスにしては真剣味を帯びていて、こちらに語りかけてくるようでした。普通のパーソナリティなら、適当に相槌を打って、適当な話をでっち上げて答えるところでしょうに、ラジオは沈黙してあなたの答えを待っているようでした。

 普通に考えて、そんなことはあり得ないのはわかっています。けれど、あなたはぽつぽつと話し始めました。いじめを受けていること、それを苦に自殺を考えていることを。

 両親は自分に厳しく、いじめられているだなんて精神が軟弱なだけだ、甘えだ、と取り合ってくれないことも話しました。

 話し終えると、少しの間をもってから、パーソナリティが言います。

「それで、死んじゃうの? やり返そうとか、見返そうとか思わないの?」

 あなたは俯きました。

 やり返そうとも見返そうともあなたは思っていませんでした。全部無意味に思えたからです。見返そうと言ったって、別に成績が悪いとか、運動ができないとかそういうわけではないのです。ただただ人格否定をされるばかり。親にもいじめっ子にも否定され続けた自分が何かできるとは思えませんでしたし、何かしようとも思えませんでした。

 もう、疲れてしまったのです。

「死んだらそこで終わりだから。もう、終わりたい」

 そう告げたあなたにパーソナリティはある疑問を投げかけました。

「そんなの、死んでみないとわからないじゃない?」

 え、と聞き返そうとした瞬間、ざあっと急に周波数が拾えなくなったような耳障りなノイズが頭の中に響いて、あなたはひどい目眩と頭痛に襲われました。

 そうして、意識が真っ暗に閉ざされたのです。

 暗闇の中でパーソナリティの声が聞こえた気がします。

「ゲストの方、ありがとうございましたー。それでは、また次回」

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