第二話 住民講座
「この地域の森で、獣人の子が一人になってしまうことってある?」
「詳しく話してくれ」
真剣な目をした議長の視線を受け取る
情報として欲しいのか、該当者がいる?
「孤児院に居た時、砦に行く以前の雪が浅い頃。
獣人の子が倒れているのを見つけた。」
怪我していた。孤児院で治るまでいたが、帰る場所がないと言っていた。
「今は、多分もう孤児院を出ている頃。」
この辺は人族至上主義の勢力がいることで、獣人はマシな仕事につけない。
下働きという名の奴隷のようなものらしい。
そんな訳で、獣人は近づかない土地で、逃げ出したとセリは聞いていた。
「獣人の国に行くか、山裾に沿っていけば小国に着く。
どっちかに行けと言っておいた。」
流れはそんなとこだ。
砦に行ったセリには、その後のことはわからない。
「特徴は?」
「黒い毛で、猫の耳」
議長は、難しい顔をしている。
該当する子供がいるんだろうか?
「一旦、預からせてくれ」
それに頷く。確認するのだろう。
知っている事を話して、あとは丸投げだ。
ゆっくりお菓子を食べ終わったところで、声がかかった。
「セリちゃーん」カナンが迎えに来た。
「仕事は?」
思いついた疑問を投げたが、どこか痛いところに当たったらしい。
場所を移して、グスタフの研究室。
話しているのは、シュルトだ。
「この城にいるには、
騎士
衛士
新人兵士ね。」
その家族が居住して
他に、病棟に入る子供。その保護者よ。」
組織に対する理解を上げるために聞いた。
家族が来れない場合は保護者という人がつく。
“兎獣人の女の子は、家族ではなく親戚の騎士と来たらしいよ”と聞いた。
セリの仲が良いと言えるのは、その子と獅子の獣人の子だ。
(2人。)
“仲良くするな”とは言われていないけど、
人族で突然来たセリには警戒されている。
砦があって交戦する場合もある
つまり、敵。
ロードの番ということで、仮市民の権利を得ているが学ぶ事を求められた。そろそろ、グスタフに弓を習う約束をとりつけどう鍛えるか考えている。
顔に触る。
“にこやかな笑顔の練習”っていうのもしたな。
『人形みたいに生気が無い』
という評価だったけど。少々の淑女教育をかじった、砦に居た女性たちの影響だ。
(所作なんかは覚えているだろうか?)
いや、それより「弓矢の練習がしたい。」
少し手解きはされたが、まだまだ。
筋力も不安定だが、遠距離の手段は便利だ。
逃げるのにも役立つ。
「魔術士とかじゃねーの?」
カナンの疑問は確かに、人間の魔術師は多いからだ。
魔法の専門職や職人の枠に入れられ魔術士も人族が多い。
「魔道具、便利だから欲しい。」
孤児院に置ければ良いなという願望の方をセリはいった。
セリに当初の予定では、証明の冒険者と市民権を得る事だった。
孤児が選択する職業のひとつだ。
伝手などないしスキルもなくても
神父、シスターの教えで、真面目にやれていた。
セリは獣人の国で、腕力の仕事などにはつけないと思い、反対の小国に向かうつもりだった。
そのため、採取と回復薬を作れるようになった。
職人が多いと聞くその国は、
染め物など植物を使う依頼を受けてほそぼそ暮らそうと考えていた。
女の子ひとりで暮らす大変さはあっても、無理とまで難易度が高い暮らしではない。
その矢先に砦へ連れてこられ
計画にない事だったが、戦闘力は上がった。
ロードがいることで、だいぶ違うらしい未来を考えているところだった。




