序章 生まれ
長らく、時間をあけましたが第3幕掲載します。
夢を覚えていることが多い。
窓越しに雪を見た。この窓は隙間風があって寒かった筈。
孤児院でも、砦に行った時でさえあった雪に何の変哲もなく
白く冷たい、音もなくなる降り積もる。
夢の中でも白い世界で、温度だけは分からないが
孤児院での暮らしの夢だと思う。
いつから孤児院に居たかは、記憶にない。
最初の記憶から、既に神父様やシスター達が居たので
物心つく頃から居たのだろう。
多くの子供の例に漏れず、母も父もわからない。
ここでは出生がわからないのが、大半なのは子供だけではない。
運命神を祀る、山に近い教会。
孤児院と言っていたのは、子供が多かったから。
捨てられるか、辿り着いた幼な子が10歳くらい育つまでいる。
親が亡くなってくる子もいれば、怪我などで滞在する者も受け入れた。
なんとか食糧を調達して暮らす日々だった。
セリが食糧調達に動き出したのは、小さい子が腹を空かせていたから。
動ける自分が狩りに行くのが筋だと行動に移した。
しかし、相談するくらいには慎重だった。
“狩りには準備が重要”
習ったことを守り、試しながら雪の積もる林を歩く。
帰った後には、狩人のお爺さんからまた学ぶ。
獲物というより採取の要領が良くなり、食卓の食事の量が増えた。
小型の魔物を見つけた時は、木の上から飛びつくくらいには
大胆な事もした。
生傷が絶えないのを見かねたシスターが、回復薬を作って治療してくれた。使う素材を持ち帰り、作り方も覚えた。
魔法を使えるくらいに練度も練れたのは、シスターに魔力を支えて教えるのも上手い人がいたからだ。
生活魔法と呼ばれる、便利な魔法を使い続け繊細な制御も可能になった理由だ。雪かきでさえ、魔力を使い切るまで行っていた。
何かと行動的でバランスが良いものの孤児院の子供達とは、距離が見えた。単独行動が多く、ニコリとも笑わない。
周囲と距離を取りたいと思う者もいるので、輪の中に入らないのを咎めるつもりはなかったらしいシスター達は、様子を見る方向だった。
逆に、側に居て欲しいとお思う子供に捕まっている時があった。
少しずつ、相手をして面倒見の良さもで出る。
そんな何年かを
雪の溶けない孤児院で過ごし、そろそろ出ていくことを考えだした時。
兵士達が孤児院に訪れた。
最初は、魔物に襲われて避難してきただけだったが。
“あの孤児院は食糧の余裕がある。何かあるんだろう”
という噂を間に受けてやって来た。
取り上げようとしたのか、子供でも下働きに使ってやろうと
有り難くもない話を持ちかける。
手ぶらでは帰ってくれないと思われた。
だから。人族の砦に連れていかれることにした。
そうだ、あの頃に居た子達は大丈夫だっただろうか?
特に、黒い毛を持つ獣人の子。
久しぶりに、その事が気になり出したセリが覚醒し、目を開けると
既に見慣れてきた、竜人の男が隣で横になっていたのだった。
カクヨム様で先行投稿中です。
あちらから移す際に、少々手を加えて載せてます。




