折り返し
「バイバイ」
木上の豹に挨拶をして、凍った川を渡ったセリ達。
この先に目指す巨木の周辺調査をして折り返すことになる。
遠回りのルートには洞窟、魔物が巣食っていたポイントを通り、『極北の城』の南門から帰る。
セリが使ったことがあるのは、北門。
その時ロードに抱えられ、気を失なっていたので記憶にないだろう。
今回出てきたのは、東門。
南は大物を入れる大きな門が備えられている。
そこを開けず、脇の小さな門から入る。
「基本、住民は西門から入るケド、商人は馬車を多く所有しているから
南門を使うのよねー。」
シュルトから話をセリが聞きいている。抱えているロードが片手が開くよう、抱っこの形だが荷物のように軽々と持っていた。
後ろを向くので、シュルトと世間話をしながらでも進んでいる。
木々が鬱蒼としていて、警戒しながら進んでいた。
先程の木々より根っこがうねり、足を取られそうだ。
木の枝も細く、乗ると折れるかもしれない。
様子がだいぶ違う。
シュルトの話は、これから向かう場所の話になった。
この先の巨木には、曰くがあるらしい。
魔物を呼ぶ木
と言われ、周りに木は生えず、魔力を蓄える
木の魔物になる可能性を秘めているらしい。
「切ってしまえば?」
と言うものの、実際そうすると魔物を呼んでしまう。
急激な魔力の発散は、魔物の集まりも急激に起こる。
“適度に魔力を削ぐのが一番良い”
研究者の結論と、警戒対象として情報を回した。
兵達の見回りのポイントになっているため、少しの異変の報告から
管理もしている。
専門知識のあるグスタフの調査する。
セリをシュルトの近くに置き、ロードが呟く
「一狩りできそうだ。」
目的は肉なのだ。
セリのためであるが、本人は気づいていない目的。
目視できた。狼型の魔物が唸っているが、虚勢のように聞こえる。
竜人を前にすれば逃げるのが懸命だが
積雪が舞う
襲いかかってきたが、簡単にロードに転がされた。
セリはのんびり見ていた。
ここまで安心感のある外出はしたことがない。
装備も温かく、周りから気を遣ってもらえるのは楽しい
過酷さとは違ったお出かけを楽しんでいた。
進みも速い。
目的地の場所は木が中心に立つだけで、ぽっかりとした空間。
土の色、葉、色が変色している。
奇妙な寒さ、心地の悪さを感じる。
「アレ?魔化が進んでる?」キースが気負いなく言った。
それは、
凶暴な魔物に襲い掛かられると言う意味。
ザワザワと森がざわめく。
警戒から皆、得物を構えた。
前衛をロード。
その後ろに大弓に矢をつがえるグスタフが構えた。
キースにカナンが護衛に立ち、
セリにシュルトをつけて万全な迎撃体制だ。
一塊に警戒すると
グルルル
狼
何匹も姿を現した
「さっきのは先遣隊だったか?」カナンの言うように本隊のお出ましだ。
よだれを垂らし、動きもぎこちない
群なのに連携がいまいちだなと
冷静にみていたセリは、ナイフを手にしているが
(魔物の群も怖くない。)
ポンポン飛ばされて、跳ね除けられる姿と
弓を射るたびに一匹地に沈む狼
「腐敗してるの、いるかな?」
ウズウズと魔法を出せるように構えるも出番はなさそうだ。
まだ押されてもいないし、突破もされていない
ついでに腐敗とか怪我した様子の狼はいない。
毛皮(予定)が積み上がるが
危なげなく捌かれる。
薄いグレーの毛皮が人気、スノーウルフと呼ばれる魔物。
隠れるのが上手く、群れで襲ってくる。
状態異常なのか
量が多いだけ
それも脅威なはずだが、ロードとグスタフで捌けた。
木の影からしか出てこない
後では、練られた魔力が膨らんだ。
好戦的な眼だった
(火の延焼が一番怖い)
派手な火の魔法を眺めながら、セリは、魔物が何匹倒れたか数えていたのだった。




