足止め
「それで邪魔するの、僕の決定を?」
部屋の一室では、上層部が横に並ぶ。
セリへのちょっかいを咎めているのは外交用の顔のキースだ。
「部下へどういう伝え方してるの?」
キースからの苦情申し立てに、関わりある兵の上司を呼び出した。
議長が間に入る形だが、セリの保護者として不機嫌さを出していた。
「セリは連れていく。ロードの番でもあるけど、この辺の子だよ?地元民に協力してもらう事くらい、あるよね?」
やったことは悪戯程度だけど、標的はセリだった。番に攻撃するなんて
大惨事も考えられる。というか奇跡的に回避されただけ。
下ではなく上の指導不足を問う事にした。
教育機関でもあるここで若手が暴走したなんて、通じない。
(残念だよ。統率力を疑われてね?)
キースはここで、議長に任せるため黙った。
「仮市民と決めたセリに、市民に攻撃したんだ
処分は免れない。」
「しかし!人間の子に、親もわからぬような…」
「黙れ。それはセリの咎ではない。」
子供のせいにするなと断じる。
「中央に報告する。隊の権力を一部停止。」
剥奪まではいかないが、この閉鎖的な環境で権限を停止されるのは、評価を下げた。
居づらくもなる。
再教育のことを通達、解散させた。
その後の議長とキースは
「理解不足か。ロードに出張ってもらうかな。」
「どっちにしろ、僕の依頼が終わってからね?」
いざこざの収拾をつけた。
「明日行こっか。」
長引く方が面倒だからとキースは即時行動を宣言する。
「天気は問題ない。」グスタフのお墨付き。
荒れるようなら延期するが。他の足止めが入らないうとに行ってしまおう。
「いつ出るの?」
「日が昇る前には門を出たいな。」
準備万端だ。
キノコ、木の実、葉っぱ。
この雪の大地で、探し出すのは大変だ。
数の少なさ、雪で探し難い。
群生地にだどりついても、魔物との遭遇が予想される。
魔物も餌になる物を盗られるのは許し難いだろう。
セリの狙いは、小型の魔物が食糧保存して。忘れられたような隠し場所の
木の実や薬草。
巣の中に入れ込んだり、氷漬けになったものを持ち帰る。
木の根も大事な食糧だ。
どう探すかは、観察と魔力。
『どんな魔物がどう動くか?想像力を働かせろ』
熟年の狩人のお爺ちゃんから習った。
狩人は、生息生物の習性や経験で見つけ出せる物を。
セリの勘の良さ、魔力での見分けで拾得物を手に入れる。
グスタフが狩人の役割を担い、
魔物の排除をロードが主に担う。
セリは守られながら、探索ができる。
警戒しながらの周回ではなく
探検の気分で密かに楽しみだ。
いつもなら手を出せない場所
今回は、足場を作り出す魔法で危険な場所も試せる。
もちろんやる前に相談する相手、手助けが得られるのもあるが
“とにかく楽しみなお出かけ”
恐怖はない。
狙われやすい自覚はあるが、
最近のこの城の中より、安全かもしれないと考え出した。
毒物も投石も意思のある排除行為だ。
外での全てが敵であり、恵の争奪戦ではない。
存在の否定は、精神的に落ち込むものがあった。
早めの出奔も再び考えようかと思っているが…
ロードの存在だ。
消えれば、追いかけられ、その前に暴れる予感がする。
どれほど建物に被害が及ぶだろう?
人的被害は知らない。
(適当に加減できそうだなあ)と思える。
セリは自身の行動に慎重さは必要だと思った。
自分1人の行動で、壊れるものがある。
(取り扱い注意、なロードを常に頭に入れておかないと。)
下手に怪我しても危険な気がする。
自分じゃなく、周囲が…という特異な状況だが
(頼る相手がいる事に慣れないけど。)と思うが、気持ちは上向きだった。




