扱い
騎士?
食後を狙って近づいて来た3人。
たれ耳の犬獣人だろうか?
貴族っぽさがある騎士といった様子で背筋を伸ばした
クマさんは前衛の護衛だろうか。
そしてせせこましさのある。小柄な犬獣人、衛生兵だ。
この人だけ、しっかり確認した事がある。ならば、同じく面識があると思い出せた。その時は傷だらけの2人だった。
《《あの砦で》》。
少し緊張しているのをセリは自覚する。
「あの子供か?」
「間違いないデスよ」
訝しむ騎士、確信する衛生兵。
「君がセリ?」
熊の獣人に敵対の眼差しはない。穏やかな問いかけ。
“まだ頷かない”
「先に名乗るのが礼儀だろう。」
ビシッと騎士の礼をする
「アレクセイ。セレナーデの騎士だ。」
「ビクトール、あの頃は見習いでしたが、今は衛生士デス!」
「ベンゼル。あの時はしっかり目を見て言えなかったけど。
ありがとう。」
セリは怯む。
肯定すれば、敵国の砦に居たことを認めている。
まだ、自身が認めたくない事だった。
保身か、恐怖か分からないけど逃げたくなる。
と、
ビクッ!と3人の獣人が体を強張らせた。強敵と対峙しているような緊張感?
「オイっ。ロード!」
カナンの声で、反射的にセリはロードを見た。
(あ、怒ってる。)
ヒュオオと吹雪が発生させられるような、凍てつく視線。
それを見て、セリが冷静になった。
「場所を変えようか?」
カナンの提案にセリが頷くと、さっさと食堂から出た。
ロードがセリを抱えて。
空いていた会議室に入り込んだ。
「ここなら、まあ。邪魔は入らないと思う。」
カナンの案内で、長い装飾のされた机がある、窓から日がさす明るい部屋に全員入った。どうするの?とカナンが目線で聞く。
「わたしが話すから、2人は待ってて。」
ロードが難色を示す。
「窓際で見えるところで話す」姿は見えるけど、会話は届かない距離だ。
心配な顔で見るロードに
「ちょっとだから」と言って、3人を招く。
セリは疑問を3人にぶつけた。
「何でいるの?」
「「それはこちらの台詞だ。」」
アレクセイとビクトールの犬獣人、2人がハモった。
「僕は顔を見れなかったし、自信がなかったんだけど」
クマ獣人のベンゼルに反論があった
「あんな魔力量の子どもが、何人もこの僻地にいると思うのか?」
(魔法をぶっ放し過ぎたらしい。)
「においでデス!」
(におい?)
「ヒィ?!」
「近づき過ぎだったみたいだね〜」
ベンゼンの大きな身体に隠れた小犬。すっぽり見えない。
騎士の姿にアレクセイがため息をつく。
「はあ。まさか竜人の番だったんだな。」
やっぱそこになるか。
「事故。ここの事も知らなかった。」
命令で来たと思われないように、先に言う。
「ああ。理解している。」
「怪我は大丈夫デス?」
(この反応は、疑ってきたのではないのかな。)
「お礼を言いにきたの。僕たち、セリに感謝してる。
力になるよ?」
「まだ黙っててほしい。」
「わかった。」にっこり、すんなり受け入れられた。
組織に所属している3人は、上の命令や重要事項は話さないといけない。
それを黙っていたら、罰を受けるかもしれないのに。
「何でまた怪我したんだ?」
セリも馬鹿な上官の煽りを食らった身だ
ここにくるきっかけは馬鹿な行軍で…。
ここに来た理由を説明する。
「同情する。」
心からと言いたげなのは、彼ら3人もあの状況が似た理由だったと匂わせた。
「何かあれば声をかけてくれ。」
「衛生塔にいマス」
「僕はまだ室内での任務なんだ。食堂によくいるかなあ。」
彼らに口止めはしたけど、逃げ道もある。
大丈夫、私があの砦に居たと肯定はしていない。
巻き込まず、苦しいけど言い逃れる事ができる筈。
(相談からだな)とセリは今後の段取りを考え始めた。
ロードに抱きかかえながら。
カナンは、(どーすんのかな?)とこの会合を
とりあえず見守る構えだった。




