教育
“ここで暮らすにあたってやることはあるか?”
議長に聞いた際、セリに要請されたのは
”勉強をして欲しい“だった。
「内容は自由だ」と言われたのでセリが決めたのは、薬草学と魔導具の事。魔術や魔力、この地域の薬草の事なら役に立ちそうという理由で。
グスタフが講義する時に参加しても良いと許可をもらった。
「他は本を読む」
日々の習慣は変わらない。以前から通っていた図書館に加え、
読める本が増えた分が変化か。
そこで子供向けと勧められた、変な本が手元にある。
魔導書を借りに行った新しい部屋にて『部屋に持ち帰る用の本』とあった数冊を勧められて部屋に戻った。
何を勧められたのか?
開いたら「ラ・ラ・ラ〜!」本が歌いだしたので、閉じた。
次は?『喋り倒す本』と表紙にあったので、開くのを止めた。
もう一冊、綺麗な花の絵表紙の本を開くと、綺麗な声のハミングが聞こえる。
(なんだこれ?)
いきなり音が聞こえたのに警戒しながら、最後の一冊の辞典みたいな分厚い本を開き読むと、普通のお話?
冒頭で興味がなくなったので閉じようにも、なぜか見つめている自分。
「視線が外せない」
困っていると、ロードが閉じてくれた。
『開いた人が、閉じられない本』らしい。
「なんで?」そんな本があるんだろう。
「勉強しない子ども用だ」
図書館に居た管理の人は、大人用の本棚に来た子供だったから、丁度来た子供に良いと思った選書を勧めたのだろう。親に勧めても借りていかない本。不人気だったのか?
正直、セリには余計なお世話だった。
「もっと嫌いになりそう。」セリは正直な感想を言った。
ハミングの本は、景色の絵があって素敵だけど。他は煩い。
紙の素材が良く、色もついていて凄く綺麗な本だ。
城が立ち上がるポップアップ。
「城壁がないから攻めやすそう」
「それ、子どもの感想じゃないよ?」
「・・湖で泳げそうだね。」
カナンの指摘に感想を変えたけど、誤魔化せるのかな?
手元にペンと書き取りにとくれた紙を用意する。とても書きやすい。
だいたいの字は読めるし、書き取りして風景描写を覚えよう。
(雪に、棒で書いて字を覚えてたんだよねー。)
この環境が凄い。シュルトのおやつ付きである。カナンは暇そうにセリの借りた本を読んでいる。
(字が読めて読書する大人が多いんだな。)
「綺麗な字だな!」
ロードに褒められつつ、わたしの疑問に答えてくれたり他の国の話をしてくれた。旅して国を跨ぐ事が多かったらしい。
寝る前には、ロードの訪れた旅の風景を話してくれるのが恒例になった。わたしが眠るまで話してくれると、夢見が良くて楽しい。
文化の知識も増やした。ロードだと聞けない話をカナンとの会話で補う。
疑問に思ったことを、シュルトに聞く方式だ。
(常識って、場所で変わるんだなあ。)
他に武術にも興味があったけど
セリが獣人と戦うには体が出来ていないのでやめておいた。
怪我してロードが荒ぶるのが心配だ。
もう少し雪が減ったら、カナンに相手を頼もうかな。
文字や調合の初歩は習ったことがあったので、
後は本の知識や人と話す。
「基本はできている」グスタフさんからの認定で
薬学の本を借りて読むことに。
作ったことのない《《おまじない》》を思い出したので、紙に書いて伝えておいた。
「そうか。試しに作ってみるか?」
と言ってもらったので、予定を合わせることにする。
この件にキース様も参加したいそうで、予定が決まり次第グスタフさんの研究室で会うことになるだろう。
その時は、お茶会もするらしいのでお菓子が楽しみなセリだった。




