期待
第2話
「今回の協力で、褒賞が出るらしいケド。」
「報奨金か?」
シュルトの情報にロードが反応する。
セリの反応は微妙だ。お金というのも、まあ困らないが。
報奨を出すのは、わたしが解決の手助けになったと知らしめる意味もあるらしい。
ただの一般人と言い切るのが面倒になってきたので、貰える物は貰っときたい。多少のお金がある方が待遇が変わってもなんとかなると思ってる。
「セリに何が欲しいか聞こうかって話が出てるケド…」
相手は騎士で、単に話をしようって訳じゃないのだろう。
見定めをされるか。
“名ばかりの、耳触りが良いだけの装飾された言葉じゃないか?”
確認は大事だけど
「わからない」と言ってしまおう。
難しいし、いちいち確認するのは普通の子どもは怪しいから。
良い子を演じよう。実際の聞き分け良くないけど。
そう思っていたのに、議長との面会でやらかした。
騎士の強い問われ方に、どうせ欲しい物があるんだろ?っていう態度に。
挑発だと思ったけど、わたしの望みがある。
「孤児院に、帰れる?」
孤児院でゆっくり過ごすとはならないだろうけど。
顔を出して、無事を伝えて
ここのお土産も持って帰れるかな?
薬草とか薬の知識も増えれば、皆助かるだろうか。
ぽたっと溢れる
「セリ?」
「…帰りたい。」
敵国の兵士だったけど、砦に行きたくなかった。出て行く事にはなっただろうけど。生き残るためにも判断したけど。
砦での暮らしは、必死で。兵の人達が良くしてくれた。
貴族の上官は面倒だった。
ぽたっぽたっと落ちて…
ロードにぎゅうっと抱きしめられる。
「泣かないでくれ。俺が連れて帰ってやるから!」
泣いてるらしいと気づいて、流れ落ちるまま視界ぼやけるまま。
ギュッと抱きついてしまった。
その日の面会はそこで終わり。
バツが悪そうな騎士の顔を残して退室した。
「お茶どうぞ」
ロードの部屋に戻った。シュルトがお茶を淹れてくれたらしい。優しい香りのハーブティだ。
泣いて水分が無くなったのか、沁みるように美味しい。
「帰る方法か。場所はわかるのか?」
ロードの問いに、とりあえず首を横に振る。
正確な方向はわからない。場所の記憶はあるけど下手に明かせば追手がかかる状況とか、ありえる。
情報収集してからにしよう。
(思い出したと小出しに様子を見て進めないと。)
「帰る手段と荷物は準備できそうね。時期は暖かくなる方が良いから…」
頷く。
急ぐつもりはない。すぐ帰れる場所ではない筈だ。行商人が孤児院まで来るのも躊躇うくらいだったから。毎回、近くの村まで行ってたし。
ついでに泣くつもりもなかった。
少々、恥ずかしい。
ロードの膝の上なのは、もう違和感。
(いつからこうだっけ?)
最初の方は病棟の部屋で1人だったのに。
「落ち着いたか?」
ふっと視線を外す。
「アラ、今更はずかしがってもねー?」
微笑ましいと笑われる。
(揶揄われてる)
「報奨は帰る時に、まだ長い時間があるからって。
周りに甘えてね?」
心配するシュルトに
「はい」小さい声で返事した。
「まあ子供に言うことじゃはかったわよネ?」
「ああ。今日の騎士の態度は横柄過ぎた。」
議長が呆れている。
セリが感情的になるのは初めてだけど、家が恋しくなる気持ちが出た。
良い事ネ。
「後のこと決めなきゃね〜?ー」
孤児院に着いたとして、
「ロードとのことか。セリには悪いがあの男の戦力を予定外に出せない。」
「じゃ、王都に?」
「できればな。」
引き篭もる竜人に居てもらうには、番の方に働きかけるしかない。
「セリの勉強にも良い」
「知識欲、ありそうだものね?」
そこに賭けるしかないようだ。




