第39話 成敗
散歩くらいは咎められないようで、セリ達3人は咎められる事なく屋根のある廊下を歩く。
(働く人が動いているだけか。)
日がすっかり暮れ、寒さも増している。
家族持ちはのんびり過ごして、わざわざ寒い外になど出ない時間帯だ。
(気配はなし)
隠れるのが得意な獣人を見つけられる気はしないけど、
警戒はしていた。
戸締りされた店舗、人気のない食堂を物珍しく見るも長居はしない。
「夜に酒出す店出たり、突然やる店もあってなー。」
解説付きでセリは退屈しなかった。
「お酒の店ばっかなの?」
「兵士向けだからなー、酒に食いもん…色々な?」
(色々?)
「昼の後、女子供向けに菓子や甘いパンが出るぞ?」
「甘いパンって?」セリは、固い保存用のパンしかなかったので知らない。
ここに来て、柔らかい白パンが食べられるって嘘じゃないと知った。
てっきり砦の兵士の冗談かと思ったのと、貴族の食べ物という認識だった。
「今度見に行こう」
ロードからのお誘いに喜ぶ。
が、少し歩いて思い至った。
(獣人の輪の中に入って行って大丈夫かな?)
部屋から出さない理由が、敵対関係かもしれない人間だから?
警備面と住人の目に入れないためかも
実際に行くかは人間の商人、シュルトにこっそり聞いてからにしよう。
ロードは自身の言葉で暴走気味になる
気になったら聞ける相手は貴重だ。
直接、隣の男に聞くのは早いが…ちらりと様子を伺うと微笑みをくれる。
以前の不用意な考えを言って、悲しませるのは…焦る。
しかし、部屋の外を出さないのはロードが
番を見せたくないのが理由だったりする。
「あれが兵舎。んで、あっちが夜警の奴らの待機場。」
そろそろ、折り返し地点。
夜警の兵士が行き交う。
「普段なら、演習を行ったりで、近づく場所じゃないな。」
ロードからも補足情報と、
暖かくなるとると、花壇の花が咲くらしい。
雪の中で眠る花、ここは花壇か。
(へえ。食べられるかな。)
セリの興味が食に向くのは、環境の影響だ。
高く売れるなら考えるかもしれない。習慣がものを言った。
「戻る時には中庭を通って、あっちな。」カナンが先導する。
ここら辺は一般人の立ち入りはないため、案内されている体<てい>で散歩する。
それを…見られていた。
珍しい3人組。
強さの象徴、竜人
その番の人族
狼獣人と目される男
一度はその目で見てみたいと若い兵が増えている。
遠巻きなのはギロっと竜人の威圧を受けたのと、
油断なく案内する男だ。
ロードについては獣人部隊が置いてかれた話より、魔物を倒した話が巡る。
しかも、うまい肉にありつけた
番を見つけたらしい。羨ましいと言うよりやはり、憧れなのだ。
そのうちの1人がこっそり、離れて行った。
中庭にて。
子供っぽさが残る。獣人達が行く手と、後戻りする道を塞いだ。
「オイ!規律に反しているのはわかってんのか!?」
カナンの怒鳴り声が、一枚膜があるようで聞こえづらい。
周囲にはロードの魔法、防御膜に包まれる。
「ったく、クッセ!」
刺激臭のする何かを放り込まれ、子供たちからの襲撃、魔法、の犯人達と目される相手方は、
足元が凍って動けない。
そのうちに、夜警の兵が集まってきたのだった。




