第37話 闇
“後ろ暗い相手とは、勝手に動くもの。”
最初に手を出したのは相手
次は私が動く
盤上の駒ゲームのように、相手の動きを受けて立つ。
部屋に戻ったセリは、窓際で暗闇が支配していく森を見ていた。
不穏なことが起きた時
怪しいのは、イレギュラーな者だ。
知らない存在
怪しい、人間は特に。
獣人の集まりだってそう思うだろう。
“集団心理”と言うんだったか。
ただでさえ突然来た見知らぬ人間に、疑惑の目が向く。
人間の方でもある。
その思いになぜ?とは問わない。
(私は害される前に、抵抗するだけ。)
闇色に外は染まった。その分、くっきりと明るい部屋は暖かい。
セリがかつていた場所は、ほとんど外と言って良い所だった。
孤児院では隙間風を布を詰めて防いだものだ。
砦ではもっと酷い所で寝るしかないこともあった
(変われば変わるもの)
外に放り出されるのも…きっと、あるかもしれない未来。
「セリ?」
そうなったらついてきそうな男がいるのも変化か。
番って
「黄昏てるセリちゃん〜、ホイ温かいお茶。」
出されたボウルを両手で受け取る。
「ハチミツ加えるか?」
「砂糖もあるよー」
ロードとカナンが睨み合う。
ふざけるくらいには仲良くなったけど。
(気の回してくれるのは大人なのに、言い合う姿はどうしてこうも子供っぽいのか?)
考えるセリは、温かなお茶をゆっくり飲む。
ーさて、どう切り出そうか?
今日の夜は、雪も降らず動き回るには良い天候だ。
この2人が外に出してくれるとは思わない。バレた後はシュルトが怖い。
シスター達みたいな、ビクッと謝らなきゃいけないような。
心配させているのは理解している
暗闇に入っていかないのは
この温かさと明るい場所に
あの砦に戻りたくはない。
責任とか?
脱走兵って厳しい罰があるんだよなー
捕虜?
そういうの、貴族の基準だしわからないな。
考えたくない
「何考えてる?」
横に座るロードに、セリは寄りかかる。
こういう事をできる相手って嬉しい。
考えているのは、私から仕掛けるタイミング。
(夜中?起きれるかな。)
「散歩に行ってみる?」
護衛が進言していいのかという事を飲み込み
真意を探そうと見つめる。
隣から視線を手で遮られた?
「セリが行きたいなら、付き合うぞ?」
(意外。)禁止されると思った。
「網に入った輩を見に行きたいよねー?」
私が、態と目につくところに行って誘い出したとわかっているようだ。
「ちゃんと入ってるかな?」
無駄足させるかも。
「まあ、何かしら来るでしょー。」
「安全第一、な。」
過保護なのか、やんちゃなのかわからない2人だなと思った。
“たぶん護衛としてはダメだよね。”
のセリフは、後で言おうと思うセリだった。
(だって、ついてきてくれなくなるかもだし?)
それからの準備は、軽やかだった。




