20-正夢?
ラストです
「やな夢みた。」
走り回って寝床に入ってすぐ寝られた。
狩りを目的ではなく、森を気ままに駆けたのは爽快だった。後ろについてきてくれる安心感も違う。
なのに変な夢だった。
夢見の悪さにちょっと不貞腐れているセリ。慰めようと膝に乗せ、頭を撫でたロード。
(慣れてるな。)
その様子も見慣れたものだ。
ロードは自身の欲望のままに行動しているが、話をは聴いている。番の言うことなら聞き逃さない。
「どんな夢だったノ?」
シュルトから聞かれ、なかなか詳細に夢の話をした。高級な食事をしに来たみたいで、着飾って誰かと一緒で。
ヒュオッと魔力が乱れる。
セリが誰かと一緒にいるのは、夢であっても嫌なのか。
「椅子を引いて座らせてもらった。店の雰囲気も良くて食事を楽しみに待っていて、運ばれた食事をひと口。」
「味は?」
「美味しかった、と思う。」
カナンの茶化しにも、答える。それほど気にしている様子はないか?
「嬉しくって、顔を見たの。その時始めて。でも座っていたのは、
知らない男。」
そこが嫌だったらしい、顔を顰める珍しいセリを見る。
具体的で、食事に行った夢は最後の相手だけ気に入らなかったらしい。
慰めるために、朝食をすすめた。
「てっきり、ロードだと思ってたのに。」
“誰か”が知らない男で嫌だったのか。夢に文句を言ってもしょうがないと思うが。
「食いもんは美味かったんだろ?ラッキーじゃん。」
夢は夢だ。カナンが撫でで慰めを言う。
現実味があった分、後味は良くなかったようだ。
「ロードが良いのに。」
それが本心だった。
この本音にロードが固まる。
“ロードを認め、居てほしい。”そう望まれていると実感できた。
ぎゅうっとセリを抱きしめる。
食事の邪魔になったのは悪いと思うが、今湧きあがった歓喜を表現するのは止められなかった。
「俺の、セリ。」
番はやっと、この腕の中に納まってくれた。
これからも、離すことはない。
<終わり>
ストーリーはここで一旦終わりとなっています。
最後に挨拶文と改めて続ける意思はありますので、お付き合い頂けると嬉しいです。




