第35話 危険
セリは自分の足で歩けてはいるが、手は繋いでいる。
運動不足を解消したいところだが、これでも大きな一歩である。
食堂についた。
賑わっているが少し遅い時間を狙って来ていたので、空席を探せた。
獣人ばかりが目につく。
この城に来る兵士は、ほぼ獣人だ。
極北の寒さに耐えられ、頑丈な身体を持つ者。
その家族と、病を抱えて治療が必要な子供。その治療に関わる者。
セリは、様々な耳や尻尾に目線がいくのを誤魔化した。
つい、ふさっと動いてるのに目が行く。
(じっと見るのは失礼に当たる)
『人で言ったら、胸やお尻を注視するようなもので
触るのもよっぽど仲良くなった間柄でなら可能ってトコね。』
そうシュルトと認識を擦り合わせた。
結果セリの理解は、“お触り厳禁”。
オヤジか?と思われる事を考えていたが、無礼な態度は改める。
大柄な者が多く、セリの目線くらいに尻尾がある。
動くのを見たい気持ちが湧き上がってしまう。
自分にないものは興味がある。
砦では人間ばかりだった。
まあ、獣人の捕虜を世話していた時に興味のまま触ったこともあったが。
知らなかったので、ノーカウントにして欲しい。
(もし再会したら謝るか。)
そんな事もあったなと、12歳が記憶を思い返していた。
「持ってくるわ〜。」
2人分の食事を取りに行くカナン。
席でロードと待つ。椅子は高いので膝の上。
(もう慣れた。)
久々のテーブルで、既に食事をしている兵士の食べているものを見る。
2種類あるのか、スープが違うようだ。
クリームか、野菜のスープ。
どっちも美味しそう。
カナンが戻ってくるのを楽しみに待った。
自分で持ってくるには、蹴られてしまいそうだし、既にロードが離さないだろう。
今も何が楽しいのか、セリをギュッと抱きしめている。
「人間?」
「子供だよな」
「あれが竜人の…」
兵士向けの食堂というのは、家族単位で別の場所だったり、自炊しているからだ。
通常、子供は来ない。
遠巻きの声、セリのことを囁く内容を聴き
自分が目立っていることを自覚した。
セリは勘違いしている
ロードもカナンも込みで、目立つ。
力を持つ竜人のロードは、とっつきにくく話しかけられない。
話しかけても取り合わない。それでもその力は認められている。
カナンの方は、アイツ裏の仕事してるんだよな?と噂が流れている。
どこの部隊にも所属していない。
危険なヤツと思われていた。
そんな警戒も含み
関わらないように、兵士達は過ごしていたのだった。
危険人物、近づきくな危険、かも?
そんな扱いなのだが、それぞれの自覚は低かったのだった。




