第三十六話 石の価値
「まず、教会か貴族に話が行くよー」
セリが、精霊獣と戯れる妄想をするまで行ったところで、カナンが事実を告げた。
石、宝石を求めるため宝石を持つ者に話が行く。その前に困った事があったら教会に話に行くのが通常の流れだった。
先んじよう、抜きん出ようとした商人が破産まで賭けにでる話も流れた。
「エナジーがどうのこうのって理由らしいね。願いを聞き入れた際には、好む石を要求しているって話だよ?」
「精霊ちゃんも?」
その闇の精霊と思わしき精霊は、特に動きはなく。
「石の中でおやすみ中らしい。」
セリの解釈だが、間違ってはいないだろう。反応がなく、動けなかったと思われる精霊だ。省エネ中。
「んー、消え掛けてるって判断したけど。主張ができるほど意思がはっきりしてるし。中位精霊ほどの力、存在は得ているんじゃないかな?」
中位って判断されるのは、力が貯まれば精霊獣の形をとれる精霊の事。
移動も簡単にできるようになる。
じっと石を見続け変化がない。ので、キースに視線を移した。
『仮定だけどね?』という微笑みだった。
その優しそうな表情に、少しも甘さも入っていない筈が勘違いしそうになる。そういうう魔法を使っていると言われたら信じると思う。
多分、拝謁するのも人が厳選されて会うのに何日も掛かる人。今の気軽なお茶をしている状況が異質なのだ。それを間違えないようにしないと。
そう距離をセリは弁えようと思った。その思考は、貴族のカトレアから学んだ教育の結果であって。
キースには当然に身につき、シュルトは敏感に察知する領域。
カナンとロードは理解より動きで、把握していた。彼らの物言いでキースが気を悪くしたとしたら、自身の側から外せば良いのだから。
それができる人。セリは少しその影響を知ったため緊張している。それを感じるキースは気にもとめない。
自身に不利益でなければ良い。いちいち興味のない事を気にするだろうか?つまり、気にもならない小事。
今は、竜人とその番の子供ではなく。精霊を手にしたセリがどうするかに興味があるだけ。
「石をやれば、すぐ精霊獣になるならやってみるか?」
「どの石を好むかやってみないとねー。」
ロードとカナンは、乗り気らしい。
(宝石って高価だったよなあ。)
セリでもそれくらい分かる。値段は、さっぱり想像つかないのだが。
「どれくらい貢げば、精霊獣になるんだろうね?」
「それで、身代を傾けた店をいくつか知ってるワ。」
シュルトの得る情報量は多そうだが、何人か知っている商人や貴族がいるらしい。
セリは考えこむ。
できるだろうか?それが、手の内に居る精霊のためになるかも分からなかったのだった。




