第三十四話 酒の席
グスタフはドワーフが突発的な酒盛りに参戦していた。夕食代わりでもある。
そかしこで、テーブルに食べ物が置かれて数人のグループを作り話をしている。
参加者は獣人の兵士も居て、気分で食べ物をとりに行き酒を補充しているスタイルだ。話に加わる時に、酒を持ってきて注いで入って行く者も多い。自然と話相手が変わっていく流れだった。
もちろん、全く動かない者もいる。挨拶に酒は当然なドワーフには有効だ。
『呑めないと』言えば、酒ではなく割る時用の飲み物をくれる。
“自身の酒が減らない”と考えるらしい。無理やり呑ませるのは酒好キにアラズ。
食事時に酒がないのは考えられない暮らしなのは、確かだ。知り合いのドワーフに声をかけられ、席に座れば当然のようにグラスに酒が入って渡された。
グスタフには、その流れに違和感がないほどには馴染みがある。子供の時、ドワーフに囲まれた生活をしていたのだ。酒の匂い、濃い味の食べ物。大声での会話と突然の乾杯の音頭は、ホームのようで心地良い。
「よお、進捗はどうだい?」
「問題ない。」
グスタフの仕事は洞窟の調査、ドワーフの知識的な確認だった。今も動かせる機構に、技術的にも問題点は見られなかった。簡易な仕組みが残されているだけだったが、100年以上前に閉じられているため保存状態は良い。
形式も特異なものはなく、たまに隠し部屋があるのは遊び心だ。危険はない。
この場所は、採掘ができなくなって閉じたのだろうと言うドワーフの技術班と意見は一致している。
そのため調査は済んでいて、後は鉱石の状態を採掘して調べる予定だ。
それも慌てる仕事ではない。酒を呑んで、大いに息抜きだ。作られた洞窟風呂やサウナも賑わうだろう。
机にある料理を食べ、時たま回ってくる料理をとりながら話を聞き、酒を注がれるまま過ごしていた。近くの会話が耳に飛び込んでくる…
「精霊?それって高いらしいなっ!」
事実、精霊の宿した武器は高価で取引されている。オークションに出せば、一生遊んで…とはいかないが、かなりの金額だ。
「子供が持ってんだろ?飽きて無くなっても気にしないんじゃないか?」
ここに住んでいる子供は、セリだけだ。獣人の兵士達が話している内容は、良からぬ話のようだ。
「あー、やめとけ、やめとけっ」
「まだ鉱石掘り出した方が金になるぞ。」
酒の席だ。ドワーフ達も割って入り止めるだけで、咎めはしない。
しかし、護衛役のカナンには耳に入れておこうとグスタフは心に留めた。自分と怖がらず話せるセリに肩入れしたい気持ちはある。
そんな事にはなっているとは知れず、セリの夕食では酒の席で肴になっている品を摘み、お楽しみを分けてもらった気分で過ごしていたのだった。




