第三十一話 きのこ用の魔法
案内されて壁をくり抜いたような場所に入った。
中はいっぱいの、きのこ。
「食べて美味けりゃ、育てるのもうまい。ってな」
ドワーフの暮らしに、きのこは馴染みがあるのだろう。
セリの居た地域では、『きのこには手を出してはダメだ』と言われる。
有毒のものと食用が似ていたり毒の含有量が少なくても、異常状態になる事もある。
『食べてロクな装備なく寒い外に行って帰ってこない。』なんてことも実際にあった話として聴く。
よくよく言い聞かせていた。
ここは管理された場所だ。栽培きのこに毒気はないと話しているが、知識はしっかりあるようだ。
「こいつはバターでこんがりだな。生焼けはダメだっ」
「こいつは、子供にはクセがあるか?あの酒には最高なんだがなあ」
「子供に酒は早いぞ〜」
食べれるか、食べられないかそれが大事だとセリは思う。酒もきのこも子供にはキツい毒症状の扱いだ。
ドワーフは、両方ともに耐性が強いらしい。育つ環境で、食べ物によっても強化されると聞くが。その食べ続ける期間が10年の単位でもおかしくない。
『長命種族の感覚は、話半分に聞いておけ』と助言をもらっている。
子供と言ってるが、グスタフも子供扱いらしい。そうなるとセリは赤ん坊だろうか?
小柄なオジサンが大声で楽しそうに会話が続く。
「こっちはグスタフ坊は好むかの〜」
グスタフを坊や扱いするのはビックリする。感覚の違いは明白で、セリくらいの年齢なら父親でおかしくない差だけど。
お土産に良さそうなスープで美味しいものを選んでもらった。
話のついでに、お土産予定だったものを見せる。
「クズ魔石か。装飾作るやつが使ってるって聞いたな」
セリが集めたものが、魔石の欠片かもわからない。
「調べて魔石だったら調合に使ってみる」
火で炙ってみたりキースの鑑定を使わず、特定してみせる。密かにセリが決心した。
土魔法で栄養を行き渡す方法を教わった。
「こう、ぐいっと入れるんだが、その後は強くっちゃあ行けねえ。」
感覚的の話だったが、コツを踏まえて水魔法でやってみる。
水に強いきのこで試させてもらった。
成長を促進する魔法は、対象の状態を良く知り視るのが大切だ。やり過ぎると
「おうおうっ美味そうだ」
水魔法を使うドワーフは居らず、土をいじるだけだったらしい。
ここのきのこは兵士向けの食堂で使われる分もある。セリでも知っているきのこを譲り、その分は酒を増やしてもらっているのだとか。
セリにも少し美味しくなったきのこを食べる機会があるかもしれない。
「もちつ持たれる?
「もちつ持たれつ、かなあ。」
カナンが訂正する。セリの言いようでは酒で胃がもたれそうだ。人族の基準じゃないのだから、問題はないのだ他。
楽しくきのこを育てる様子を見ていた。
「おらっ酒呑むかいなあ?」
ドワーフには全てが、酒の肴用であるらしかった。




