第二十三話 伝心
夜が更けてきても、専門家の意見交換は続いているようだった。その会話とは隔絶された部屋でセリは健やかに寝た。首から下げていた袋は小箱に収められている。
おやすみと言ってから、寝床に入った。ウキウキした目で、まだ眠りの気配はない。
「寝た方がいい。」
「うん。寝るよ。」
いよいよ、探索ができるのだ。楽しみである。その気持ちをわかっているもののロードは、セリを寝かしつけた。
「明日な。」
「おやすみ」
ちゅっとおやすみの接吻をされて、おとなしく眠りについた。
「精霊が消えるか、育つかだよね?」
「精霊を育てた記録は少ない。精霊は場所に深く関わる。力を得られなくなれば消える存在だとされていた。今回の場合は、精霊が宿った武器の例が使えるだろう」
「じゃあ、鍛えるの?」
「その方法なら力の補充と強化の両方が成り立つ。」
「ふーん?まあセリは冒険者になりたいみたいだから、良いのかもね?」
「反対、か?」
「さあ?止めはしないけど、まあ危険から全部守る竜がいるから平気なのかも。」
「そうか。精霊に守護されれば守りの力を授かる事になるようだが。」
精霊の力を宿した『精霊石』、それを加工した武器はオークションで出回っている。手にできる者は限られている訳だが。
精霊の存在自体、物語の中であるとされている。この2人は高価な精霊石の武器に触れる機会があり、精霊に会いに行ける伝手もある。
だからこそ、ここまで詳しい上に受け入れられている。
シュルトからしたら、宝物庫で保管されていてもおかしくない物の話だ。冒険者の与太話ではない。
そんな貴重なものを持っていると頭に入れ、普段は忘れていようと思う。
(希少価値の物が近くにあるって、プレッシャーよ!)
その視線で訴えられたカナンは、胃痛を覚えた。
(オレ、それ込みで守んなきゃいけないんだけどお?)
通じ合ったが、問題は解決しない。
専門家2人にも声をかけて、早々に寝る事にした。
明日は探索に出て行くセリのために持っていく食事を用意しなければと、気持ちを切り替えて安眠したのだった。
その朝、セリはパッと目が覚めた。
すぐに動くということはな叶わなかった。ロードという重しがあればそれもしょうがない。
箱を開ける
精霊の棲家としてもらったのは、黒曜石。
身代わり石とも言うんだったか?贈り物には不向きな石だった筈。
ナイフにできると聞いた記憶があった。割れやすいらしいけど。
洞窟内を歩く。
精霊ははんのうがないけど、問題もなさそうだった。
ロードに挨拶し、着替える。
シュルトの手伝いをして、朝食を早めたのだった。




