第十五話 持ち帰り
グスタフが静かに部屋の隅へ近寄っていった。
闇に慣れた目で、揺らいでいる存在が濃くなる。魔力をあげたのだろう。
(光は、3つだろうか。)
個数として数えるのも、光という表現は変だろうか?
ぼんやりと浮かぶ闇色。グスタフが出した片手に近づいたのが分かった。
「あれが精霊?」
「グスタフがそう判断したなら、そうだろう。」
セリの手のひらくらいの大きさが浮いていた。瞬くような動きは弱々しいのか、そういった存在なのか。
(判断が難しい。)
いきなり近づくのも驚かせるだろう。気になるが待った。
部屋は他に変化もなく、静かだ。他の場所では兵士が巡回に来たりとしていると思うが。ここは外れているのかも。
「良いぞ」
グスタフに呼ばれ、セリとロードが精霊に近づいた。
特に逃げる様子はない、綿毛。触れたらふわふわだろうか。
(ブラックベリー色かな)
いっきに美味しそうな物にしてしまった。
グスタフの指先に乗るようにして、大人しそうだ。
「触っている感覚はある?」
魔法を使っている時のような、光の源を触っている格好だ。
「感覚はない。魔力は感じる。」
そっとセリに精霊の乗る指を向ける。
「闇の精霊、魔素不足で光のオーブのようになっている。」
「敵意はないな。」
「ああ、消えそうだ」
ロードが確認して、グスタフが他の2つも寄ってきている。セリは、ふわふわと漂いそうな精霊を両手で受け取る。
「魔力、あげられる?」
「触れていれば、少し魔力を持っていく」
今も、魔力を吸っているらしい?
「体に異変は?」
ロードが心配してセリに確かめる。
「特に?」
魔力の移動さえ、感覚で感じられない。
「精霊は魔力で育つわけじゃない。場の魔素を取り込んでいると考えられている。今は存在が薄れているな。」
「本来の形じゃないのか。」
ふわふわなのは見た目だけらしい。ツンツン突くとちょっと揺れた。
「魔素不足で魔法が使える状態なら、精霊獣になって移動している筈だが。」
「動けてないな。」
動けなくなってしまったのか、出られなかったのか。
「聞いたら答えてくれるかな?」
セリの手に包まれているような精霊に視線が向くが、ふわふわ浮いているだけだ。
「意思疎通ができるまで、力が戻ればな。」
「どれくらいかかるんだ?」
「この様子だと、年単位だな。」
少し明滅する精霊と話せるにはまだ先らしい。
「一緒に居る?」
ふわっと揺れたのは、迷ったのか合意だったのかも。
そっと、服の中に入れてみた。特に出たそうにはしていない?
「そこ、なのか。」
ロードが複雑そうだった。




