第十四話 待機
興味がわいてロードのコーヒーを貰ったが、苦すぎた。
「粉になってるの?」
持ち運びに簡単な粉で持ってきたらしい。香りは大丈夫。
味が落ちたコーヒーの粉は、火を点けて虫除けに使われる。
「臭い消しに使う事もあるな。」
「んー、炭じゃないんだよね?」
セリの記憶では、臭い消しに使っていたのは炭だった。
「冒険者の間では知られてる」
「地域差があるかなあ」
セリはコーヒーが眠気覚しに飲むとは知っていたが、飲んだのも見たのも初めてだ。
「“酒精の強い酒があれば良い”」
「セリ?」
「知り合いのドワーフのおじさんが言ってた。」
「セリは、やめとけな。」
「うん。酒精の飛んだワインは、お酒じゃないよね?」
夜の見張りで準備されたソレを飲んだ。色は紫で、味は薄いブドウ味。
「ホットジュースだな。」
ホットワインと呼べない代物の味は不味そうだ。
持っているコーヒーでロードとグスタフは、味を変えた。
セリは甘さ控えめのクッキーを食べてみるも、口に合わなかったらしい。
ロードが残りを食べた。
「紅茶は葉っぱで、作り方で色が変わるんだって。」
「黒い茶もあるってな。」
「紅色、黄色、黄緑色?」
「緑色もあるぞ」
「それって苦くて不味い?」
「薬ほどじゃないが、苦味は強いな。」
お茶が薬として飲まれていた歴史があるらしい。子供には不人気そうだなとセリは思った。緑色は苦味やえぐみがキツい薬を思わせたからだ。
「緑色も黒色も苦いかな。」
「チョコは旨いぞ?」
木の実はチョコレートで覆われていた。セリのために作られた高価なお菓子をロードが頼み、シュルトが依頼を出してできた。
「美味しい」
この笑顔だけで、作らせた甲斐がある。材料が少なかったため量はない。今後も作らせようと決めた。
「コーヒーは豆からできてて、粉で飲む」
「菓子に使われてもいるな。」
ロードは、コーヒー味のクッキーを食べた。セリもミルクと花の蜜があれば食べられそうな味だ。今は食べない。
「コーヒーなら、豆から淹れれるぞ?」
コーヒーを本格的に淹れるのは、器具を使う。透明な器具に炎、香りが違うらしい。
ミルクを入れて飲むコーヒーも違った味わいになるだろうと、王都に行ったら淹れてくれる話になった。
その時は甘いケーキもつく。
だいぶ話していたが、暗いせいか少し眠い。
「眠るのが正解、か。」
部屋の隅にグスタフの視線が向く。ロードはセリを抱きかかえて部屋を出られるように構える。
セリは、なんとか見ようと目を細めてみる。
ふわふわするのは、セリの好みだろうか?




