第三十七話 川下り
火の魔石の付与の練習、できた結果はお風呂に使われた。
「キースはずっと半裸。」
「湯着は着てるよ?」
船員はセリの言葉で仰天した顔をしたが、その様子は当事者2人に見過ごされて会話は続けられた。
「ふやけないのが不思議なくらい入っている。」
「いや?朝から夕暮れまでだったよ。」
セリは近くに居たカナンと目で意思疎通した。
“入り過ぎ”“ふやけてんじゃねーの?”
釣りは暇で、会話もぼちぼちしていても獲物のかからない状態のセリはウトウトしてきた。ロードを背に感じながら、こくりっこくり。
あまり釣果は見込めない様子。
グスタフは、書き物を再開させている。シュルトは仮眠をとっていて、船の中で寝に行った。
川はぐんぐん下っている。
「船も動いているし、魔物避けも効いてるなー。」
「気配を消している?」
「それと、船底に魔物が嫌がる魔力を発しているらしい。」
船の補強部分に入れるらしい魔道具は、魔物対策として最初から入れられている装備が積まれているのだった。
今は動力を緩く、魔力を巡らせ動かしているらしい。
流れに乗って順調に進む船の上は、のんびりとしていた。護衛の3人の中で船酔いをしていて、船内に入って休んでいる。
セリが飲み水を出し、ロードが冷やすという一幕があった。その後セリが眠ってしまったため何があったかは知らない。
「セリちゃん、寝た?」
「ああ。」
「疲れたのかなー。」
セリの寝顔を見れば、穏やかな眠りのようで安堵する。自覚はなかったようだが、極北の城にいた最近はうまく眠れていなかった。
精神的なものも心配したが、篭りっぱなしの日々がストレスをかけていたと思われていた。
改善されたと見て良いだろう。さらりと髪を撫で、冷えないように包み込む。
「楽しいなら良いんだけどさ?」
カナンがセリのほっぺたを突こうとしたので、ロードが体ごと避けた。
遊び相手としては、まあ居ても良いが。勝手に触るな!という気持ちは隠さなかった。
「露骨ー。」
当たり前だろと睨むが、竜人であるロードの圧にもめげない。やり過ぎている時は軽く凍らせるくらいはするが。
セリの近くに居て、安全性が上がる。見逃してやる気はあった。
「引いてるぞ。」
それでも、セリを独り占めしたい気持ちがセリに触れることも渋ったのだった。
特に何かある訳ではなく予定の地点まで流れていった。
そして、接岸。
「ここで下りて一泊だ。」
空は暗い。ここで夜を明かす準備を始めた。眠ったセリは力をみなぎらせていた。魚は獲れなかったが肉も葉物も充実していたので料理を手伝いはじめるのだった。




