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捕虜少女の行く先は、番(つがい)の腕の中?  作者: BBやっこ
第七幕 雪解けの時期
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第三十五話 湯煙り

早朝まだ薄暗い中、動きがあった。

目的を持って移動している。テントの様子を伺った間の後で川の方角に。


ちゃぷり

遠慮がちな水の中で身動ぎした音は、川の流れより静かであったが。

なんの音だ?と警戒を起こす程度には、異質な事だった。


魔力も感知し、その場所をのぞけば…


白く滑らかな肌。

風呂に入る水音だったらしいと知るが目を離せないほど美しい。お湯を楽しむように上げられた手。輪郭が朝日に艶めき、麗しいという言葉が頭の中を占める。


そして目が合った。



「おはよう?」


キースの朝風呂は未明から始まっていた。護衛はテントから見守る形にようだ。何か来るという心配より、風呂で寝てしまわないか気にしている護衛。交代で起きていた3人や、今はアレクセイが担当らしい。


挨拶が終わった後、長閑な時間。

「長湯だと、疲れなるって聞いた。」

「そう?温い温度だから大丈夫だよ。読書も捗る。」


明るい朝、セリは風呂に入っていた。朝風呂の気持ちよさに先にいたキースに挨拶をして今は一緒に、湯に浸かっている。


ロードが持ってきてくれた果実水は、冷えていて火照った身体に染み渡る。キースにもついでだという言葉とともに渡されていた。


ロードは入らず、セリに構っていた。キースの存在は気にせず髪をまとめてもらいながら。

「疲れは大丈夫か?」

「ちょっと足が重いかなー。」


「回復湯にする?」


キースの提案で薬湯となった。この濁り湯も見慣れてしまったが、ここは外で魔物も闊歩する。


近寄って来れないみたいだけど。

ガサっと気配や動きがあっても、やべっとばかりに遠ざかって行ってしまう。


「魔物の方が、遠慮している気分。」


対岸もそんな様子。危機を感じる事なくたまに跳ねる魚を見たりとお風呂を楽しんだ。


さっぱりした気分で朝食の準備を手伝いに行った。

キースもそろそろ出るだろう。


「貴人の風呂は危険だ。」


護衛に力が入るのか、ビクトールと交代している。



朝食には、ベンゼルと一緒に手伝って食事。


カナンが起きてきた。

「おはよー」


ぐしぐしと撫でる。

皆に見られた。

「あ。」


これも、人前でやらない習慣だったか。


大人を撫でる、少女。

絵面がちょっと怪しい。


ロードが入るため、問題というほどのことでもないのだが。


猛獣


気を許した関係は、複雑なものを感じる。


「カナン、だらしないワヨ。シャキッとしなさいな。」


シュルトが声をかけたが、そこか?という獣人と人族の感覚の違い。その溝を感じつつも、平和である事には違いなかった。

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