第29話 お菓子
突然ですが、この部屋に前触れが来た。
ここに来るのが高貴な人らしいセリは帰ろうとするも、遅かった。
「邪魔した?」
現れたのは、鑑定をしてくれた貴人だった。
「いきなりよね。キース?」
特に畏まることなく、シュルトとグスタフにも迎え入れられた。
呼び名だろうか?本名はもっと長いとか。
長い人って、偉い人だよね。(なんかツッコんで聞かない方が良さそう。)
そう考えて、セリはハーブティを飲み干した。
“帰り(逃げ)そびれた予感”
シュルトが紅茶を淹れ、ケーキを用意する。
グスタフが勧めた席に座った貴人
(ところで、偉い人なのに従者は?)と見つめてしまう。
「ああ居たの。」
存在を認識されたセリは、ぺこりと頭を下げた。
ちゃんとした礼儀がわからないし、発言には許可がいるんだったか??
「もう、どうしたのヨ。仕事じゃなかったの?」
「それがさー、面倒なのに絡まれてね?」
初対面の時より、言葉が砕けている。
(タイミングを見て帰ろう)
綺麗なティカップをいじっていた、思いついた事について考えていたセリに
「どうした?」ロードが促す
「紅茶をいただいても良い?」こっそり相談した。
シュルトに願い貰ったジャムを開ける。
「紅茶にジャムを入れると美味しいって聞いた。」
「僕もやる」
甘党らしい。
「で、何の話してたの?」
「セリが知る《《おまじない》》が、ポーションの仕組みに似ている。」
グスタフはそう言うが、セリが試した限りでは、ポーションと呼ばれるものの効果をあげられていない。
材料か作り手の技量か。
「使っている植物で回復薬の効果を上げれるだろうか?」と聞いた話が発展した。
「ふーん回復ね。魔力の領域かな?知ってる?」
「水魔法に近い魔力だ。」
グスタフが答える。
お茶を一杯飲んだところで、従者の人がお戻り願えませかとやって来た。
「まだ話たりないね?」
お茶会を所望らしい。
紅茶を希望したのは、キース様(暫定)だ。
場所はロードの部屋で今の面々で行う、と。
いつの間にかセリも入っていた。
内心を読まれたのか
「セリの部屋でもあるからな?」
ロードと同居しているらしい。知らなかった。
(間借り人だと思ってた。)セリの本音は
ロードに嘆かれたくないので、黙っていることになった。
ロード(とセリ?)の部屋まで、4人で戻り
シュルトは議長、カナンは西の長に伝えるんだろう。
まあ困る内容じゃないし。
「祝福に似てる。」
「妖精の悪戯では?」
「精霊のまで到達するかもしれん」
目の前で広がる話グスタフとキース様?の会話。
「わかってる?凄いことだよ。」
(・・さっぱり。)
とりあえず、貴重らしいとセリは認識を改めたのだった。




