第26話 制御
セリにも魔力はあった。なんなら使っていた。
人族が言う、生活魔法の類だ。
省エネで使いたい分だけ使う。
マッチを擦るように、指先に乗るような炎が生まれた。
「ハハハッ種火になりそうだなあ!」
笑いが起こる
笑っているが、正解だ。
暖を取るために最低限の魔力で、消えない炎。
セリはサービス精神で、もっと出すことにした。
チッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッ・・
両手でどんどん小さな炎を出して行く。
蝋燭の炎のように風に揺れても、消えはしない。
周りが炎だらけになったところで、飽きてやめた。
「スゴイ。」「キレー」と声が出る。
浮く炎は間隔も開けられ、制御できていた。
(こんなに出せたんだなあ。)
やった当人もこれほど連続で出したことはなかった。魔力の保存のためだと言われたが、
目をつけられないようにという周りの配慮でもあった。
ちょっと楽しくなってきた。
日々、生活魔法と言えど実用してきているセリ。
嫌味に直接返したりしないが、
(なめられっぱなしで良いことなどない)
セリの経験則だった。
「い、いいでしょう、他の属性も試してみましょう。」
土魔法で、種を入れられるほどの穴をぽこぽこ作っている。
その横で作り出した火に、風を送って移動させた炎を大きくしてみる。
闇魔法は火を隠すように覆って行くなど
やりたい放題にセリは遊んでいた。
周りはそれに、唖然とする。
炎を出したままの制御、重ねがけ、それを維持している。
魔力の制御の繊細さ、扱いがとんでもなかった。
獣人より魔力の扱いが上手い人族の中でも、異様だ。
そう見られているのを無視してセリは、
小さかった炎を風で巻き上げ、大きな火のボールにした。
(そろそろ、消火をしよう。)
飽きたのだ。
最後に、水の魔法を同じくら位の魔力量でぶつけた。
じゅうっ!
と上の方で音がして終わった。
上空では水魔法がプールのように浮いている。
「インチキだ!何か魔導具でも持ってるんだろっ!」
「番に寄生してな!」
ロードの金で買ったものという主張だが、どんな魔導具があるんだろう?
と気になる。しかし話しかけるのはやめた。2階からの圧が怖い。
自分で処理する事にした。
水魔法で相手してやろう。ふわふわと両手で持てそうな水玉を浮かせる。
腕力だけの勝負より、勝算がある。
「ファイアーボール!」
3人から魔法が飛んでくる。
セリは軽々、浮かせた水玉で相殺した。
と同時に、打ってきたやつの顔に当てる。
「冷めて!」「うっ」「イッテェ」
後続はないようだ。
(水浸しにしてやろうかと思ったのに。)
好戦的なセリだった。
「まずは人に向けない練習をしたら?」
少々の嫌味くらい勝ったご褒美だ。
歴史上にも争いが絶えない種族間の話だ。
生まれる前のことを言われてもねー。
国と言われる場所に居ただけ。
威光もなく
恩恵もないのに
言うことは聞け。聞かないなら敵
そんな環境に諦めもあったセリだった。




