39-到着
以前と同じように、転移の先は議長の部屋のテラス的な位置だった。
既に連絡が行っていたようで、獣人の医者が兄妹を保護する。その様子を見送り、セリは周囲にバレないように息を吐いた。
敵意のような目は窮屈で、助けを求める目は無視し続けるに何かを削った。
その結果のため息だったが、小さな動作だがロードが過剰に心配したためセリの足が浮いたままの移動になった。
(んー)
ギュッとセリがロードに近づけば、ちょっと気分が軽くなる気もする。
「旅の疲れもあるだろう」と、議長の言葉で早々に解散だった。
…と言っても、ほとんどがロードの部屋へ。
セリの部屋だとも言われるがもう集まる部屋だ。夕食に議長も参加して食べる流れだった。
これから、獣人の救出のため国への抗議に、調査と慌ただしく動くのだろうがセリの関わりはここまでだ。
(貴族が関わる誘拐なんて、国レベルの事件。)
やれることがないが正しい。
最果ての教会まで逃げられたら、その先セリのいた教会まで逃げる事ができる筈だ。
極北の城からも人を送れるよう、道が繋がった。
救出に役立つ縁にはなったのかもしれないが、変わらず受け入れるのが運命神の教会なのだろう。
(また顔を出せたら良いと思うけど、それも何年後かだ。)
セリは自身の足で行こうと決めた。
今回は連れて行ってもらった感が強過ぎた印象だった。その筆頭ロードがやっと、部屋に入っておろしてくれた。
「疲れたか?」
その言葉に応えて、ぎゅうっと懐く。
「気持ち的に疲れた。」
あの兄妹に何も思わなかった訳じゃない。それでも必要な事をして帰ってきた。
“周囲に守られて”
(守られてばかりじゃイヤだ)、と。
セリは決めた。
「獣人の国に行く」
人族だと風当たりが強いともきいていた。けどロードと居るには知っておいた方が良い事も多い。
人族の国に興味は惹かれない。
海と小国郡は興味があるが
(旅に出るには、力も知識も足りない。)
セリの周囲が強いには分かっている。
交渉事
薬学の知識
大局を見るには経験が足りず
ロードについていける体力も…
(それは相当難しいけど。)
「どうした?」
「色々、足りないんだなって。自分が。」
寂しい気持ちになり、思考も揺れてきた。
「まだ成長途中だろ?セリ、ゆっくりで良い。」
ぽんぽんっと背に心地よいリズムが伝わる。
「家族がいないって寂しいかな?」
親がいない、育った兄弟姉妹達の縁も希薄だ。
その状態が、縁があれば助けると思うけど、見放す事も躊躇わないかもと自身の考え方に思至った。
それは冷たく、冷静で正しくても。寂しいもの?
「誰もいらない」
そう呟いたロードが、セリだけを抱きしめていた。




