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捕虜少女の行く先は、番(つがい)の腕の中?  作者: BBやっこ
第6幕 観察
269/411

39-到着

以前と同じように、転移の先は議長の部屋のテラス的な位置だった。


既に連絡が行っていたようで、獣人の医者が兄妹を保護する。その様子を見送り、セリは周囲にバレないように息を吐いた。


敵意のような目は窮屈で、助けを求める目は無視し続けるに何かを削った。


その結果のため息だったが、小さな動作だがロードが過剰に心配したためセリの足が浮いたままの移動になった。


(んー)

ギュッとセリがロードに近づけば、ちょっと気分が軽くなる気もする。

「旅の疲れもあるだろう」と、議長の言葉で早々に解散だった。


…と言っても、ほとんどがロードの部屋へ。

セリの部屋だとも言われるがもう集まる部屋だ。夕食に議長も参加して食べる流れだった。


これから、獣人の救出のため国への抗議に、調査と慌ただしく動くのだろうがセリの関わりはここまでだ。


(貴族が関わる誘拐なんて、国レベルの事件。)


やれることがないが正しい。

最果ての教会まで逃げられたら、その先セリのいた教会まで逃げる事ができる筈だ。


極北の城からも人を送れるよう、道が繋がった。

救出に役立つ縁にはなったのかもしれないが、変わらず受け入れるのが運命神の教会なのだろう。


(また顔を出せたら良いと思うけど、それも何年後かだ。)

セリは自身の足で行こうと決めた。


今回は連れて行ってもらった感が強過ぎた印象だった。その筆頭ロードがやっと、部屋に入っておろしてくれた。


「疲れたか?」

その言葉に応えて、ぎゅうっと懐く。


「気持ち的に疲れた。」

あの兄妹に何も思わなかった訳じゃない。それでも必要な事をして帰ってきた。


“周囲に守られて”


(守られてばかりじゃイヤだ)、と。

セリは決めた。


「獣人の国に行く」


人族だと風当たりが強いともきいていた。けどロードと居るには知っておいた方が良い事も多い。


人族の国に興味は惹かれない。


海と小国郡は興味があるが

(旅に出るには、力も知識も足りない。)


セリの周囲が強いには分かっている。

交渉事

薬学の知識

大局を見るには経験が足りず

ロードについていける体力も…


(それは相当難しいけど。)


「どうした?」


「色々、足りないんだなって。自分が。」

寂しい気持ちになり、思考も揺れてきた。


「まだ成長途中だろ?セリ、ゆっくりで良い。」


ぽんぽんっと背に心地よいリズムが伝わる。


「家族がいないって寂しいかな?」


親がいない、育った兄弟姉妹達の縁も希薄だ。

その状態が、縁があれば助けると思うけど、見放す事も躊躇わないかもと自身の考え方に思至った。


それは冷たく、冷静で正しくても。寂しいもの?


「誰もいらない」



そう呟いたロードが、セリだけを抱きしめていた。

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