10-伏せ
3日後
セリがロードとともにグスタフの講義に出ると、その聴講に集まった衛生士の歓迎を受けた。
薬、治療、魔物の知識を必修の衛生兵には魔木の知識があった。その危険性も知っていて、初期のうちに抑えるのが良い事もだ。
その阻止をしてくれたセリに感謝と敬意を持っていた。
子供であり、講義に出ていた顔見知りで心配もしていた。
特にビクトールの話から、
部屋から出てこれたセリに、大丈夫かと声がかけられた。セリは驚きつつも応え、中心人物であろうビクトールに手を振った。
部屋に篭るのはロードの希望だったが、確かに体調の心配はあった。一番影響を受けたカナンとは違い、転移に慣れていなかったのと魔力を使った後だったためと結論づけられたが。
カナンはまだ狼姿だ。それはまた違う影響なのかもしれない。
その狼を側に控えている。
臭い消しを使っているため、薬品の匂いもなんのその。
そろそろ仕事したいなーて気分。ずっと休みは落ち着かないし、モフられるだけの狼ではいたくなかった。
伏せで待つ、警護中だった。
ロードが側にいるから必要ない気もするが、セリが喜んでいるのでまあいっか。
会話が落ち着いた頃、グスタフが入室してきて講義が始まった。
『使用する薬品、品質の管理、魔力の使い方だ。』
スキル、魔力によって少し変え、ポーションを飲みながらも作成している。セリは見学だ。
魔力を使う上に、少々扱いづらい薬草も使うからだ。衛生士には問題なく作られていく薬品の臭い。その対策に臭い消しの塗り薬を使う。
狼にも、ロードにも使って、やり過ごせた。
「これで基本の薬品は作れる。今後、改良されるだろうが。」
手順や注意事項を共有し、講義は終了した、
帰りところで、声をかけられる。カナンが身構え、ロードはセリの肩に手を置く距離にいた。
(知らない顔だなあ)
と思ったら、衛生士ではないが参加したらしい。情報部だとか。
「ね、側に置くなら俺にしない?」
“可愛いでしょ?”と言いたげなのがムカつく
女の子にモテる、クリッとした瞳小柄で茶のぶちの犬獣人。
アピールには十分だ。好まれる容姿なのも理解はできたがそれだけ。
その容姿、セリには刺さらなかった。
そして予感。ただの子供に媚びを見せるその動機に心あたるものを無視して正直に答えた。
「こっちのが好き」
もふもふと手を置くその先は、カナンである。
パタパタと尾が動く。
ロードが前に出て、犬獣人の男は壁に逃げていった。
「お疲れ」
たぶん、誰かに言われた任務だったのだろうとその尻尾が震えているのは寒いせいだった。
凍ってないだけマシなのだが、次出て来たらどうなるかわからないだろう。
ロードがイラついている。その分、狼の足取りは軽いものだった。




