3-黒い泡あわ
結局、狼はシュルトが洗う。
「ホラ、諦めなさいナ。」
「グゥ」
「アラ、セリにやって欲しかったのネエ。今度にしなさいヨ。」
「グルゥッ」
会話になっている?
『洗われるのは不服だったけど、セリにして欲しかった訳でもないわっ』ってところかなあ。
セリもやりたかったが、体調不良が心配なので許可が出なかった。狼は洗われるのは決定で、拒否はデキナイ。
準備された固形の石鹸を取り出すと、色が付いている?
セリはロードに世話されているが、石鹸の色に驚いている。
「グレー?黒い。」
臭いをとるのに使われているという石鹸をシュルトが準備してくれた。
炭の匂いが独特だが、確かに薬品臭さは消えた。
白い泡に炭を混ぜた黒色?白い泡?を手に取り見る。
セリは、作れるだろうか?と考える。
(調合の後に手を洗うのに良いかも。)
そうしてる間に、ロードの手により髪が洗い終わった。
「お湯かけるぞ」
ロードの声に、うんと言えばお湯が滝のように降り注いだ。
もう一回音がしたが、それはセリの方ではない。
「フゥ。狼オッケー」
ぺシャンと毛並みが悉く濡れている狼に、少し楽しくなる。
「ブラッシング、したい。」
乾かすのが先かな。
そう言ったが、臭いも取れたし、出るぞ。と風呂は終わりだ。
「またこれば良い」
白い湯の色が何が入っているのか気になりつつも、出た。
ダルさを感じる。
簡単に身支度をして、ロードの抱っこで移動。
グスタフとキースは置いて行ったが、ロードの部屋に来るらしい。
セリの部屋でもあると付け加えられる客室は、すっかり集合場所だ。
「飲み物、軽く食べられるか?」
「果物となら。」
ぼーっとする頭で、さらに盛られた果物を咀嚼する。
それも終わり、狼を撫で、どこが気持ちいのか探るものの
疲れて埋もれてみる。
(けど、寝れそうにないなあ。)
興奮はまだ残っている。
しかし、ロードは寝室へセリを直行させた。あのモフモフを梳く次の機会を待とう。
「眠くなーい」
ロードにくっつき、わがままを言う。この言い方、孤児院に居た小さい子とかだなあ
と自覚を持つも、寝られない。
それでも寝かそうと動くロードの手に、一応目を閉じる。
とっとと足音。狼が来たので、横に誘った。
「抱き枕があれば寝られるかも?」
“いたしかたなし”の苦渋の選択をしたロード
狼だろうと他の男を売れたくはなかったが、毛皮は他にない。
興奮状態か、狼も人の姿に戻っていない。
「グゥ」
戻れないらしいと察し、とりあえずセリが撫でた。
「風呂上がりの艶やかさに、手入れしたらもっと良いかも」
撫でていると、いつのまにか眠気を誘われていたのだった。




