2-風呂へ直行
「あれ?」
足がガクガクしている。ロードに抱きかかえられて座り、する事もないと安堵からか震えていた。
緊張状態だったセリが自覚すると、狼がモゾりとその毛皮を擦り付ける。
(察した。)
その毛皮に手を置き、わさわさと撫でる。
もふもふで安心。嫌がる素振りがないので、両手で掴みに行った。
顔も埋める。
「ん?薬品の臭い。」
直接かかることはなかったが、かなりの量を使ったのだ。もふもふに臭いがついてしまったらしい。
「くぅーん」それは嫌だなとばかりにカナンが声を出した。
じ獣人の時でも臭いを嫌がっていたので、今の狼な姿も嫌なのだろう。
以前のように、臭いをとる魔法をかけるか聞こうとしたものの…
「やめておけ」
ロードに止められ、普通に座らされた。だいたいがロードの上が標準になっている、おかしい!と思うも魔法を使わないように言われる。
魔力酔いがおさまり、医師とキースの許可を得てからと約束させられた。
日頃使っていた、生活魔法まで禁止されたのに不満はないが少々不安を感じる。
それも数日、念のためだと念押しされたので了承した。
「風呂へ行って来たらどうだ?」
議長の方もひと段落したようで、勧められた浴場は以前も貸し切りで使った大きいところを想像した。
説明を聞くと前とは違った場所らしく、こじんまりしていると聞いたが?
独特の趣きがあるところには違いない。
セリ用の湯着も用意してもらい、6人で入ることにした。
「ウォン!」
今は、5人と狼だろうか?
「お風呂、入れる?」
猫が嫌がるんだったか、犬は平気か?と考えを見透かすように咎める声を出す狼がいた。
「ウォフ!」
「一緒に入れるね、洗おうか?」
嬉しそうなセリだが、医師から長風呂は控えるように言われているので次回に持ち越しだ。
入れば白い石像のある豪華な、丸い風呂だった。
「マア、上流階級にしては狭いわヨ?」
「6人も入れるのに?」
「基本が従者連れ、マッサージ要員がいるから。狭苦しくないようにしたらこんな物じゃない?」
キースの説得力のある物言いだった。
以前の南国植物があった団体用の風呂より、狭いがこちらは個人用。
狭いとは思えなかったのは孤児院の風呂より大きいからか?
白い色も高級さかも知れない。
「白って高価だと聞いた記憶がある。」
「素材、高貴な色とされてるが、工法は確立されている。」
技術的には難しくない物らしいとグスタフの説明を聞くセリ。彫刻やらから、噴き出たり吐き出されるお湯の音も聞きながら。
短時間で上がるのが惜しまれる寛ぎ空間。
身体の芯まで浸かり、とりあえず帰ってきたのだなとのんびり思うも、お湯に揺蕩う狼の毛並みに、気を取られているセリだった。
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