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捕虜少女の行く先は、番(つがい)の腕の中?  作者: BBやっこ
第五幕 集結
229/411

40 -深淵


一本の木だった。


白い地肌の思ったよりは細い。


「あー、これは見つけにくいか。」


「崖の崩落で見えるようになったか。」


壁は脆いのだろう。登るのも、降りるのも難しい地肌だ。


「じゃ、始めて?」


キースの言葉に、シュルトが魔導具の設置にかかり、狼がてってけと見回りに駆けて行った。

(帰ったらモフろう。)


グスタフが取り出した樽を置き、自らは魔木に触れる距離へ移動した。


セリは魔木全体に向き合う。コレに薬品を全体に満遍なくかける役目。

樽には並々と薬品が入っていた。


薬品を掛ける作業が終わるまでに、魔導具の設置と簡単な調査おしておく手筈だ。

キースは帰還用のに転移の魔法陣を広げ、魔力を巡らせ備えている。

魔馬はお利口に待機している。


魔木は想定より小さい。

形は根が出ているようだが、薬品をかけるのに邪魔な葉はない。


魔木の頂点から。そして、全方向から薬品をかけ根まで到達すると良いが。その土の状態をグスタフが視ている。


土魔法で、さらに根を露出させるとも言っていた。


薬品がかかっても良いように、雨除けになるフードをかぶっている。

既に臭くなっていそうだけど。

「慣れだ。」


とのひと言で片付いていた。

狼になってからのカナンは、一度も近づいていない。風上をキープしているのに気づいたのは3人だ。



(麻痺しているのか。我慢強いのか今度聞いてみよう。)


シュルトが視界の縁で作業しているのを見ながら、セリは魔力を行使し始める。


気負っていない。流石に空気がおかしいのはわかっているが。

ロードが側にいた。護衛じゃなくても居てくれる。



その安全安心感に、仕事に集中できた。予定の薬品を計画通りにかけていく。


風呂のお湯ほどの水球をふよりっと浮かせた。雨のようには降らせない。まとわりつくように、覆うような膜を張るイメージで。


順調に、光沢をました部分魔木に広がる。

薬品はまだまだあった。



魔物の接近を察知した。


威嚇に吼えるも、少々怯んだ魔物もいたが群れでの勢いに流されていく。

崖を落ちるつもりはないらしいが、真っ直ぐ魔木にひた走る。


その警戒に、ひと鳴きして伝えればロードがそれを聴き取った。


魔物を防ぐ魔導具の展開。

魔力の温存も大事だが、結界の魔導具を荒らされてはならない。


魔力を使わない、爆発物を投げての牽制に止める。群れを減らしていった。


「交代しよう。」

土の壁、そして穴。



器用に避けて、狼が戻ってきた。

尻尾をふわりと振りセリの近くの立つ。


もう薬液は残っていない。


「セリ、良くやったワ」シュルトと一緒にキースの下へと集まった。


鳥の魔物が狙いを定めてくるので、火魔法を準備する。足止めくらいにはなるはずだ。そこに、シュルトが爆発符を投げ、魔物は止まる。


狼姿のカナンが魔物の群れを牽制、それでも抜かしてくる魔物はいた。

脅威ではないが煩わしい。


魔力は巡らせ

目立つ。


狙いにされているが動くわけにはいかない。

馬が落ち着かない雰囲気だが、勝手に動くことがないのは流石魔馬か。


シュルトが安心させるように、動いているのも功を奏しているだろう。


セリの立って居た地点。そこで、ロードの特大の氷魔法によって足元を冷気が走った。


氷の木のようになった魔木が佇んでいる。目視で確認して居たグスタフが陣の中へ。


ロードが、もう一回魔法を打ったが、氷の壁で魔物を防いだ。



「一応の封印はできた」


そう告げられ、転移魔法の陣が動き出す。


まだ魔物の威嚇する音が聞こえてきている。


この場で、囲まれるような地形は戦闘には向かない。

唸る魔物は、崖の上から睨んでいるが、いつか降りてくるのだろうか?


その魔物に囲まれる中、行使されが転移魔法の光に包まれながら。


これで終わりにできるとは思えなかった。

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