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捕虜少女の行く先は、番(つがい)の腕の中?  作者: BBやっこ
第五幕 集結
207/411

18-拠点メシ

通常のテントの広さを思えば、もう建物というほど大きな魔導具の中。


(会議に大人数が入れそう、集会所より広いよなあ。)


壁、部屋の区切りが、セリの育った教会より広いのをしみじみ感じる。

しかも明るく、暖かい空間。


中央の天井にある魔石は、シャンデリアのように煌々と輝いている。

そのエネルギーにより聳え立ち、中を暖めて守りの壁となる。


猪型の魔獣の体当たりくらいなら耐えるらしい。

「それも魔石の魔力量に左右される、と。」


シュルトも扱ったことのない魔導具らしい。

道具のレベルではなく、複雑。メンテナンス必須、魔力量もバカにならないくらい使う。


それを補給できるのが3人いる。今回はロードだった。


「セリもやるって言い出しそうネ?」

「最初は一気に、後はこまめに入れるのが良いらしい。」

グスタフの補足が入ったのは、ドワーフ製で整備の方法をこの魔導具の話を聞いていたからだ。


「面白い商品になりそうだけど使いづらいのがネー。」

「魔力量がなぁ。お偉い方用?」

「そうせざるを得ないワ」


カナンの指摘通り、移動の病室にと使用シーンはあっても、もっと簡易が良いと思う。ここまで豪華に強固で、魔力を食うのは扱いづらいと結論だった。


「改善点を出せば簡易版ができるカモ」

シュルトの思考は、商人である。


今夜の食事は、パンとシチューでシンプルに。肉がしっかり入っているのでセリにはご馳走だ。外で火を使って、温めて出してくれた。


この建物の中に調理場は作らず、作業の場と寝るだけにするという話。


「火の気厳禁?」

「ええ。燃えない素材で丈夫だけど煙がこもるのヨ。」


確かに、煙が出て行く場所が見当たらない。

「何かの条件で上部が開くってあったんだケレド。」

まだ不明瞭な部分もあるらしい。不思議な魔導具だと思った。



天井の魔石を眺めながら、6人で食事をとった。


椅子も机もなしで、座って食べるのは部屋での時と変わらない。メンバーも変わっていなかった。


「美味しい」



(今日、牛車に乗ってただけだったけど。)

そんなセリとロード以外は、それぞれ動いていた。


魔物も出ていたので退け、分析に計画案を作り、魔導具のちょっとしたメンテナンス。なかなかに忙しく、食事の後も仕事が控えている。


(何しに来たっけ?)

セリの役目は正直、ナイ。


キースに聞けば、北の砦の案内と答えはするが、他の人材に任せられる事だ。もう少し後だが、タローとクエンの2人が来る。


それでも、ロードに来て欲しかったのでセリが来るのは決定だった。本人が探索に乗り気なのも、こっちは助かる。


“番至上主義”は、番の行動や言動次第なのだ。

(ロードを動かすなら、セリ次第なんだよね?)


今は上手くいっているけど、注意を払わなければ。


もし予想通りの魔木が存在すれば、魔物の氾濫が起きてここは危険地帯になる。


そうなれば、北の砦に入り応戦っていう手もあるんだよね?

内部を詳しく知っているセリに、保護者にできる2人の人間。


ロードとカナンは戦力だ。

けど、セリは連れて戦うのは難しいし、怪我でもすれば


我を忘れたロードを相手にしなきゃ行けないかも。

「それは一番避けたい状況だね?」


机に積まれている書類はかわり映えしない。

各隊への指示書、地図の上に捜索の攻略を展開し駒を進めるが如く。



熱い紅茶を飲みながら思考を巡らせる。

“魔木に発見と、処理。”

そうしなければ、破滅となるだろうか?


そんな予感などせずとも終わりが忍びよっているのに気づいていないかも。


「まあ?動くしかないか。」

どんな想定でも、不利を覆して見せる。そう想い定めて。目の前の書類に山から取り掛かった。




ロードとセリが、ささっとベッドに座る。いや、セリは寝からされた。


「え、寝るの?」

「もう遅いだろう?」


確かに普段ならそうだけど、ここまでの道中は寝ていたので難しいと思う。


「おはなししよーよ。」

その誘いを拒むわけないロードだが、思ったよりもセリは早く寝むれたのだった。

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