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捕虜少女の行く先は、番(つがい)の腕の中?  作者: BBやっこ
第五幕 集結
205/411

16-北上

ずっと乗り物にのっているのも気が滅入る。とても楽ではあるけど、そんな思いも抱いてしまう。その気分を変えようと、シュルトが提案する。

「お茶を淹れましょうかネ。」


そう言ってシュルトの動きで、椅子の持ち手からテーブルが出てきた。


(仕掛けがあった!面白い。)


まだ知らない仕掛けがあるそうで、キョロキョロするセリの気持ちは浮き立っている。用意された甘いものを食べられ、楽しい時間になりそう。セッティングされて行く様を見入っている。


「お湯は沸くのに時間がかかるのヨ。」

「熱くしてね?」

「ハイハイ」


キースのオーダーを聞き流し、シュルトからお湯の魔道具の使い方を聞きセリは少し手伝った。

透明で熱に強い素材、持ち手と蓋の部分は違う。触っても熱くないようにしているとか。


「ここにお茶の葉を入れて、濃く出ないうちに引き出すのヨ」

“紅茶専用の湯沸かし器”らしい仕組みだった。


お茶菓子とばかりに、皿にクッキーが乗る。セリは、ジャムののったクッキーを口に入れられた。おいしい。ロードにもバター味のをお礼に返す。


サクッとクッキーの音が、耳に届いた。


サクサクと他にも音がしてその方向を見ると、赤いベリーのジャムが美味しいクッキーをカナンが食べている。2枚目だ。


(好きなのかな。)

ロードにクッキーを上げながら、紅茶のお湯が沸くのを待った。


透明な瓶に水が入り、泡立つようにその温度が上がっている。


コォオーと音が鳴って、温めている。魔法陣の描かれた布の上。

火が出ないにで魔石を使うより、移動中に使うには最適、と。


じーっと沸くのをセリは見つめていた。


「そろそろ、川に着きます!」

外からの声にも、視線を外さず。お湯が沸くのを待った。



止まった。


ボコボコとお湯が沸いたので魔法陣から外す。紅茶の葉に淹れ、香りが室内に広がった。


外で動いている音も、やる事のない場合は聞いているだけ。扉が開けられると、ヒヤッと冷たい風が吹き込んだ。

つい、ロードにくっつく。撫でられ、服の中に入れられた。


(狭い。)

冷たい風に驚いたけど、そこまで体温を奪うものじゃないかも。密着の苦しさから解放してもらうも、膝掛けが追加された。


モフっとしてて触り心地を何度か確かめた。


やがて、グスタフが荷物と共に入ってきて、扉は閉められた。キースと話し合いをすぐに始めている。



移動している間隔がないことくらいか。

お茶を淹れようとして、お湯が足りない。時間のかかる魔道具より、簡単な方法がある。


水を浮かせたまま、火魔法をいっぱい打ち込む。



驚かれたが、火の魔法は種火ほどで水球に入れられ消えて行く。

ぐるぐるとゆっくり混ぜ、均等に熱が伝わるよう回す。それも空中でできた。


「お湯の出来上がり。」

確かに、お湯になった。ポットに入れられる。


「アラ凄い!」


褒められた。

「器用なことできるなー。」

「練習した!」これは自慢できる。


水の扱いなら気軽に操れ練習にもなる。実は鍋がなくて、魔法でどうにかしたらできたという実用性重視の魔法だ。


「セリ、お茶係に任命。」

キースの任命を受け、2杯目に熱々な紅茶は満足できるものだったらしい。



そんなことをしていたら。出発し動き出した。

“グスタフを回収、北北東へ向かう。”


途中、見覚えのない場所を座ったまま覗き、すぐまた閉められた。通過地点の確認だったらしい。寒い風が入ってきたが、箱の中での熱くなっていたので肌に気持ち良いくらいだ。


そして1人と荷物の増えた牛車は、時間が惜しいとばかりに進み出す。


キースとグスタフの会話が室内?で響く。

探索の予定を詰めているようなので、邪魔しないように黙っていた。カナンは、目を瞑って休んでいる。


それに倣おうか?起きているのも寝れなくなる?

「着くまで暇なら寝てても良いんじゃないか。」


その通りにロードにもたれ、目を閉じたのだった。


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