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捕虜少女の行く先は、番(つがい)の腕の中?  作者: BBやっこ
第五幕 集結
204/411

15-団体さん

極北の城は、ざわめいてた。中のことではなく、城壁の中での事だ。

大規模な遠征の準備に、雪の上に荷物や兵士が動く。


雪解けの時期、魔物も動くため警戒を含めたものもあるがその時期には少し早い。より人数が多いが今回の遠征がひと味違う事は、住民には知らされていない。


遠目にちらほらと見送りに出てきた住民が見えていた。その様子に緊迫感などない。彼らにとって、ひとつの行事であるだけだった。



(多い。)

勢揃いした隊を眺められる位置にセリは居た。



キースの馬車、いや牛車に乗り込む。この大きな動く箱を引くのは毛長牛。寒さに強く、力強い魔物。よく調教されていて、逃げ足というより硬い毛と魔力で防御力のある魔物だ。


温厚な性格で、御しやすい。世話をしたことがあるが、セリの知っているものより大きく毛も長かった。


あまり鳴かない。ふごっと呼吸の合間に音を立てている。


セリの服装は軽装だった。

移動の牛車は、暖かくて座っての移動だ。護衛も周りに囲むようについているので武器さえ仕舞い込んでいる。部屋からの移動の時のようだ。

落ち着かないのとやはり外なので、腰にポーチは付けてある。


しかし、する事がない。

ロードの膝の上でソワソワしているセリは、やる事はない。


周りの動く音、外を覗き見していた。大掛かりな拠点の設営準備、その人数で小さな町ができそうだ。



(移動可能な町みたい)

絵本で読んだ、サーカスのように移動式の町を思い出した。


凄いことになっているが、十数台の牛車で済んでいるのは技術力のおかげか。第一陣でこれからも人と物が送り込まれる準備が進んでいた。


ここまで大掛かりな人数の移動、宿泊は『長期演習』でもあった。この『極北の城』では、それほど珍しい事ではなかった。


セリは、馬車というより荷車なら乗った事があるが、箱のように閉じられた空間に落ち着きがない様子だ。豪華な場所に相対して座っているのも落ち着かない。


キースは平然と書類を見ているし、その隣のシュルトは座っているまま何か手帳に書きつけている。豪華な座席、箱の中は荷物もなく、余裕があった。


ロードの膝の上にセリ。子供を歩かせる気はないので当然の扱いだった。

セリは移動手段として初めての乗り物にとにかく落ち着かない気持ちだった。

(いや、前もあまり歩いていない?全くではなかった!)



護衛にカナンも乗り込む。外は護衛がずらり、ぐるりといるようだ。荷物用の馬車もあるのが見えた。そちらは馬だ。


門の前まで来たらしい。少しの間止まっていると、出発の音が鳴り響く。

歓声も聞こえ、並んだ見送りの兵士を見る。


すごい歓待ムード。それが好きではないと言っていたキースを見る。

「面倒だけど楽だし?」


悠然と動き出した揺れに、皆乗り物にも慣れているらしい。慣れないセリだからロードの膝の上なのか、それが関係ないのかはわからない。



この牛車も含め、先遣隊として最初に北の砦の原っぱにたどり着くらしい。

「グスタフを拾って、すぐ出発ネ。」


北の砦には今日中、夜には着くらしいが。

(どう行けば着けるのか?川もあるし、この牛さん体力あるのかな。)


ゆっくり動いているところしか見た事がないので、セリは疑問だらけだ。


経路を地図で確認はせず、乗り物酔いがないか心配されながらも進んでいく振動を感じていた。


「山の勾配はこの荷物では登りきれない。川のないところまでは、かなり遠い。」


ロードの説明でどこを進んでいくかイメージしながら時間だけが経っていた。進む音だけ。


静かだ。


目を瞑っている、カナンを真似ようか。キースは書類を見ているが乗り物酔いしないから良いらしい。セリはダメと言ったシュルトは、考え事をしながら、外を見ている。


(正直、暇。)

ロードにもたれ、その手に撫でられながら時間が経つのを待った。


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