13-接触不可
「仕事をしろ」
護衛と名がついているものの、監視である。場所も自らの部屋ではない。(これでは監禁だ。)
そして、問題行動が許されないいところまできた男は監視と仕事をもって封じられた。金も融通も効かない。
贅肉と陰で、いや露骨に仇名されている男は相手を睨んだ。文官としてはほどほどに使えるが、体力はない。
今回の遠征参加に名はなかった。
男は、“権力のある者に侍る”その他は利用するモノだった。新人ではないのにこの『極北の城』に送られるのは“最後通告”と言われる。
ここで、点数を稼げなければ…どこにも居場所がなくなる。
焦りと逆転を狙う。そこに“地道に”などと言う言葉はない。自分が下に見られるなど許されない!必ず、生き残ってみせる。
それには、貴人への接触が必要で、更に竜人を使うために。
「あの子供を使わなければ!」
そこに、方針の変更などカケラもなく盲信していた。その方法も間違っている。“番を無理矢理に利用された”と判断すれば相手を滅ぼす。もはや種族での事だ。
既に、破滅しかないが男はもがけば助かると思っている。
落下している途中なだけであるのに。
その標的にされているセリは…
「とても美味しい。」
「病人向けにできそうネ?」
「ええ、もっと柔らかく煮込めます。」
コックさんの作った食事の試食をしていた。
「薄味が好まれ、野菜も使われます。獣人の文化には馴染まないでしょうか?」
「肉だけって主義のも多いけど、兵士が多いものねぇ。ケド、野菜好きな種族だっているわ。あるから肉ってのもあるのよネ。」
シュルトの商売人の知識とコックさんの料理の味を確かめながら昼食兼、保存食を試していた。
セリはロードに料理の説明したり、味の好みを聞いたりしている。今度の遠征に持っていこうと話が出ている。
兵士達との料理を別にするには問題ない。キースに着いて回る。
逆か?
シャキシャキの歯応えが楽しい。
「ここでも需要がありそうね?」
シュルトは商売の事を考えているらしい。カナンも護衛ながら参加している。
「え、葉っぱ入ってる?」
「はい。うちの方では食べる葉なんですけどぉ」
不安から語尾が伸びる。食文化も違うので、食べたりなかったりする。食材と思われないものもあるようだ。
セリは特に抵抗がなかった。凄く辛かったり、苦かったりしなければ食べる。
「薬草料理ってのもあったよね?」
健康で過ごせる様にって食べるって聞いた。入っているものは地方で違うらしいけど。
回復ポーションの薬草以外を入れて食べた覚えがある。そんな話を思い出しながら、昼食が終わった。
きのこ料理もあるので、今回ドワーフも参加らしいので食事も楽しみだった。
そしてデザートもある。
今回の荷物は多い。持っていける物も多いのだ。
楽しみは食事。体調不良の際にも食べられる物。兵士の食事には向かない部分を補うつもりだ。
「もちろんセリのため。」
「ソレと、需要がありそう。」
「面白いもん食べれるなら良い。」
全員の賛成を得られた。
コックさんは喜んで!と嬉々として作ってくれた。
2人にも作って渡したいとセリが言っていたのを聞き、シュルトに相談してもらった。レシピの権利とかの話をしているので良くしてくれるだろう。
デザートを口にすると甘いくて美味しいが…
「じゅわっとするけど、カリカリ感がない。」
「足すか?」
木の実を口に入れてもらい、そのハーモニーを楽しむ。ロードがセリの反応で注文をかける。
「追加な。」
「はいぃ!」
ロードを怖がっていたようだけど、コックさんは獣人にも慣れたらしい。
「ショック療法」
カナンが呟いたが、良くわからなかった。
お茶に、甘味を十分に食べる。
今度の遠征が楽しみな程、充実した食だった。




