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捕虜少女の行く先は、番(つがい)の腕の中?  作者: BBやっこ
第五幕 集結
200/411

11-慰労会

「お帰り願おう。」


“セレナーデの騎士”は護衛として、身分ある者にも怯まない。その名の下に権力者に楯突く事も権利として持っていた。


目の前の男は文官として古株な上に、権力もそこそこある。貴族の次男だったか?そのため代理の護衛では太刀打ちできないのも無理はない。


しかし、この状況。

壊された豪奢な扉が廊下に横たわるものの、侵入することは叶わなかった。声さえ通るか怪しい、正しく壁になっている。


“氷が侵入者を拒む”

氷の壁は音も人も通さないほど厚く作られていた。


誰がやったかは明白。その客人のした事なら、しかも必要と思ってやったと言われれば、議長であったとしても咎められないだろう。修理費は請求されるかもしれないが。


「さっさと通せ!」

「約束がありましたか?歓迎されていないようですが。」


“贅肉”と呼ばれる、この男は誰に取り入ろうとしたのやら。面会さえ拒否されているのに、押し入るのなんと厚顔無恥か。


とにかく、ここから引き剥がすのが護衛の役目だ。中で休んでいる2人が静かなうちに。「御同行、願います。」

おそらくセリが寝ているのだろう。お陰で、竜の怒りを買っていない。


数時間の休みも使えない事に、密かにため息を吐いた。まあ護衛にはよくある事だ。



そんな客室の逆側。その喧騒とはかけ離れた場所の窓から入った男がいた。

「あーあ。片付け大変そ〜。」


カナンは、ロードも気づくように窓から入った。簡易キッチンからは狭い窓をよっこいせと入り込んだのだ。


「どうすんだ、この氷の壁?」


半透明の氷の壁の先は、廊下だ。騒いでたいた奴らは護衛が引き取ってくれたらしい。


「まあ、正解か?」


客室に突撃かますとか有り得ないんだけど?と言ってやりたいが、どう言った思考回路になったかなんて知らん。あーいうには、自分は許されると信じて疑わない。ほどほどに権力者と繋がっていて、厄介。


オレが相手するもんじゃないからいいや、と部屋の氷について考える。

犯人もロードなら、責任も同じだろう。


セリちゃんが起きてくる前に、本人に退けってもらうのが早い。今日の夕食は場所を移すと知らせに来たのに、妙な入り口から入らされたな。


「おはよー」


眠そうなセリが顔を出し、ロードは平然と部屋の様子を見る。


『お前のせいだろ、この氷?!』と視線で言ったが、知らん顔だ。



セリは、ぽやっとした顔のまま氷を見る。そして、提案した。

「浴槽に、置いておく?」


採用した。この大きさを窓から放り出すのは危険だ。一部だけでも移動した方が後のやつも楽だ。


食事は別の部屋での誘いを伝え、護衛に掃除を願い出た。誰か寄越してくれるだろう。警護もつけるので、変な輩は入らない。


ロードが、氷を割っておくというので少し離れて眺める。


セリちゃんの様子が普段と違うので、気になってみれば元気がない、か?

オレの視線に気づき、「頑張ってる」と狼の耳ごと撫で始めた。


カナン、固まる。

ガコッと重い音に、そちらを見る。


「セリ、できたぞ」

そう呼ぶロードの方に行ったのを見送った。

さっきの様子とは一変、氷の塊になったのを凄い!とはしゃいでいた。


しょげていた気持ちが切り替えられたのか、ちょっと疲れているのかもなーと注意する事にした。


ロードが負けじと撫でられるところを見せられ、番い持ちのやる事なす事派手なこってと呆れるオレだった。



「夕食は、オッサンとクエン、慰労会なの?それだけではない気がする。だって忙しいって言ってたのに。」


食後に夫人のお見舞いに行こうとロードに話しかけながら、着替えた。

翡翠色の腕輪を左手に、良い生地の服。


待っていたカナンを護衛役に、砕いた氷の横を通って部屋を出た。


キースが待つ部屋だろう。

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