番外 変化
「ご苦労だったわね。もう来なくて良いわ。」
クビを告げる。この極北の城までついて来てくれて、感謝していたけど…
私の意に沿わない判断を勝手にしていた。
それに気づけたのはここ、『極北の城』団長を勤める夫と久々に会った時の会話だった。医療棟の個室での療養は、外からの人を制限した。私の場合、面会はいつでも良いと言われ養生した生活を送っていたが。
もう、側に置いておくには不信感があり過ぎる。
「な、なぜで御座いますか!カトレア様っ」
「なぜと問うのね。貴女が夫の訪れを断っていたそうね?」
「それは、お休み中にいらっしゃる団長様が…」
団長という仕事柄、書類仕事も多いと想像できる。そのため、急がしいのだろうと私から連絡を取ったのも数回だ。それさえ、数回は果たされていないかった。
「そうであっても、報告も正しくなかった。彼が来たことも告げないなんて。」
非難の目を向けた。情けなさを通り越して、あきれている。
「ここまで、仕えてくれてご苦労様。雇用関係については、屋敷に帰ってから正式にします。」
私に不利益を与える者を近くに置いておく謂れはない。
「それは…」
ここで大人しく暮らしていれば、目こぼしましょう。
「元の主人の方にもよろしく言っていいてね?」
誰が差し向けたかわからない、証拠はない。けど私とあの人の仲を悪化させる意図はあった。まんまと嵌まったわね。
それも気落ちしていた頃の話よ。
私は強くならなければ。
あの子が生きている可能性を聴いて、体から力が湧いた。
もう大丈夫です。
もう腑抜けはしない。
そうして、静かになった部屋。自分でお茶を淹れた。以前はなんでも自分でする暮らしをしていたのに、久しぶりな気がした。
騎士をしていた記憶が遠くなっている。あの子ともう一度会うのに、今の姿を見せられないわ。(鍛え直しましょう。)
気合を入れる。当面の問題は…。
思考を整理しながら紅茶を啜ると熱いだけで、味がイマイチだった。これも練習しよう。
さて、侍女がいなくなった。
今交流のある小さなお友達に、侍女見習いを頼めないか聞いてみる事にした。
身体の方に不調はもうない。
だいぶ、体が鈍っただろうから徐々に行動範囲を広げられるよう、相談しよう。
ーーーリリン視点
侍女にならなかって誘われた。獅子のご婦人のことは知っていた。団長様の奥様がいるって。その方と交流ができたのも意外だったけど。
大人の友達から、先生になって。今は…
「カトレア様」
としっかり世話をする。年齢からして。私ができるのは侍女見習いだけど
。お茶の淹れ方からマナー、淑女の振る舞いというやつを学んでいる。
親切心だけではないだろうけど、これは私には必要な変化だと思う。
きっかけをくれたセリには感謝しないとね。
まだ戻ってこないのか。そんな話ばかりカトレア様としている。
出かけたメンバーも以前の時より多いらしけど。
(心配くらいさせてよね。)
私の状態を慮りながらと良い環境だ。今回、急なお願いだったけど
“渡りに舟”だったのは私の方。
セリに感化されて、いいえ元々…
“じっとしているのは、性に合わない”って分かったの。
どうせ文句が飛んでくるんだから?
好きにすれば良いのよ。無理をするって意味じゃなくてね!
そんなある日。
「こんな子娘をお側に?!」
わあお過激。以前、お付きだった人。何か問題があって解雇の形になっている。というか、ここに来ないよう言われている女性だ。
睨まれてるぅ。全然怖くない。
「カトレア様から伺っています。お体に気をつけて後はお任せください。」
他の人の目があれば、騒げないでしょう?
まだ何か言いそうなのを、護衛の人達と共に去る。
「精一杯頑張らせていただきます。」
(バイバーイ)と心の中なでは舌を出し、お茶の用意を始めた。
こういう刺激も、素敵ね!




