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捕虜少女の行く先は、番(つがい)の腕の中?  作者: BBやっこ
第四幕 北へ
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28-決定事項

3人が護衛にと立っている主張をバッサリ切り、応接室に入れられている。

その様子を横目に、キースが執務している部屋にセリは陣取った。


ロードが椅子であり、梯子である。


「アレと、その魔法陣のっ!」

セリの言葉に抵抗もなく、本が抜かれていく。


「ハイハイ、こっちに本を置くよー。」

カナンまで付いていた。


着々と読書の空間が作られていく。

追加もきた。

「これが図鑑、こっちがそれに関する魔法陣だ。」

「それはここで読んでも良い?」


「解説も付けよう。」

専門家の話を本を見ながら聴ける。贅沢だ。


「ハイハイ、紅茶が来たわヨー」

シュルトが淹れたものではなく、専任のメイドが運んで来ていた。


「いたれりつくせり」

セリが言うと変なニュアンスになったが、まあ言いたいことはわかる。


部屋も対応ひとつとちぇも、ひと味違うのだ。

貴賓室。


高貴な場所に度々足を踏み入れ慣れているメンバーと、一番慣れていないセリだが。ここでの中心は確実に、セリだった。


この部屋の主は、まだ応接室。


なんの話か?は気にならない。北の砦に行く、そのメンバーに勧誘。

いや、強制通告だ。上からの命令に従う騎士や兵士に拒否は難しい。


目をつけられた。それだけ。

決定の申し渡しに興味などない。


セリは欲望のまま、本に目移りした。

ここは、借りる本とは別に。グスタフが解説してくれる本を優先させる。


集中している。

椅子に座るという発想がなく、もうすでにロードに腰掛けていた。


グスタフはその状態を流したが。

カナンとシュルトは、微妙な顔をした。


(番持ちって、ほんと離さねーのな?)

(年齢的にセーフ?…アウト寄りよネ。)


引き離せるとは思わないものの。場合によっては策を講じなければ。セリが困る。


まあ、今はいいか。


そんな保護者思考の2人にも、魔術書で気になるものがあった。

「これって、テントの魔導具に使ってるやつ?」

「えーと、古いんじゃないカシラ。今なら…」


部隊で使ったテントの魔導具、その魔法陣の仕組み。壊れた時の対応にとおもむろに手に取った本をカナンが持ち、シュルトが覗き込む。


対応するテントの取り扱いがあったのか、商人としての知見も広げていた。


各々、分かれて過ごしている。


応接室での面接という名の決定事項申し渡しが終わった頃


部屋で静かに集中しているのを横目に

疲労した3人の護衛が、部屋の外の任務に戻って行った。


精神衛生上、この部屋に居たくない気分になったらしい。


ススっとセリとグスタフの方へ寄ったキースは、静かに2人の会話を聞く側にまわった。


「魔法陣、魔術陣と昔は言っていたものは、決まったインクで記す。これは地方で違い、その差異によって成功も左右される。この地域はコレだ。」


図鑑をじっと見て、セリは見覚えのない植物を指す

「植物、こっちは見たことない。」


似ている色でも、形が少し違う。

グスタフが大判の資料を取り出し、ページをめくる。

「寒い中でも、南が生育域だ。」


「簡易のものなら直ぐ魔法陣できる?」


「魔法陣は、魔法より難しい。再現性がない」


「再現?」

「一回火を出しても、同じ火にならない。出ないってところだ。」

ロードが具体例を言う。


キースは黙って聞くまま。


「何回かやるつもりで、使うもの?」


(セリは、火をつける魔術陣の実用性を知りたいみたい?火が小さいし、安定しない火は使い所がなさそうだけど。)


グスタフとロードが答えた。

「火をつけるくらいなら、それで良いな。」

「使わなくっても良いんじゃないか?」


非効率で不要と言われたようなものだが、セリは使い勝手のイメージができていた。

「適正がないと、火起こしも大変。」


「ああ。それなら小さい火でも良い?」

キースがぽつりと言う。


「普段、どうしているの?」

「貰い火する」


「魔法は?」

「温存。」


「簡易で安価な魔術は売れる?」


商売の話に耳ざとく、商人が釣れた。

「おはなし、聞きたいワ?」

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