表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捕虜少女の行く先は、番(つがい)の腕の中?  作者: BBやっこ
第四幕 北へ
163/411

番外 アレクセイ

ビクトールと護衛対象、セリとの会話を観察する。


慎重というよりビビりな斥候より、衛生士は向いているんだろうな。会話を引き出す手腕は、目を見張る。単にお節介なのか単純なのかもしれないが。


私はあの時、耳の怪我で聴覚に異常をきたしていた。それに加え、重症のベンゼルを抱え、戦闘が不得意のビクトールの3人で装備も心許ない状況。


その3人で雪原に放り出され、焦っていた。

朦朧とした意識と、怪我のもどかしさ。側に来た人間の子供に警戒心剥き出しで余裕がなかった。


怖がるより、まっすぐ見てくる子供に…

戸惑った。


人間の子は、私のような大型な犬獣人は怖がる。

威圧なのか、顔が怖いとはどうすれば良いのか。子供には苦手意識があるのは事実だ。その点、ベンゼルは頼りになる。


時間のある時に、ビクトールと情報を共有したが地面で書きながらのやり取りはゆっくり進めた。怪我で集中力が削がれ、敵陣にいる危機感。


“俺”は、ベンゼルを見捨てない方法を必死で考えていた。

奴隷にされる可能性もよぎったが、結局そうなる事はなかった。



“匿われている”


とビクトールから伝えられ、信じられなかった。

観察は良いが、お人好しな性格だ。楽観的な思考傾向にある。危機的状況に、感覚が麻痺してしまった危険も。


騙されている可能性を考え、早くの脱出を試みたかったが。ベンゼルをすぐに動かさない方が良いと判断した。


『我々に必要なのは、休息だ。』

雪に降り方、進む方向。せめて視界を確保したいが、逃げ切れるのか?


渡された薬草に毒がないか確認し、手当てと体力回復に使った。


数日そこに居て、ついには出る事にしたが子供に干し肉を渡された。施しか?


当然、兵士らしい大人に警戒はされているようだ。いやあれは、子供を見守っていたのだろうと後から落ち着いて考えると、そう思った。



ただその時は、緊張から解放されるまで思考が暗い方に行ってしまった。

放逐だ。


後ろの追っ手がかからないか?ベンゼルの状態も気にしつつ、雪道を急いだ。道などないようなものだが。空がどんどん怪しくなっていく。


雪で視界も方向も悪く、どう歩いているのか不安になる。装備も、貰った干し肉もなくなりながら、とにかく進んだ。


大きな川になんとかたどり着き、捜索隊に拾われたのは運が良かった。

帰ったあと当時の聴取を受けた。


何処にいたのかは答えられなかったが。


“護衛対象は無事だったらしい”そう聞いて、任務は達成できたと少し安堵した。その相手は既に極北の城から離れていた。まあ、そんなものだろう。


ビクトールが言うように、子供に匿われたと見るには、甘い見解だと思ったが。実際、物は貰った。


“支援物資”に相手の困窮があるとしたら…。

救われたと言うのも、納得だ。使われていない馬小屋のような場所だった。他に建物は見ていないが、裕福とは思えない。子供の装備もそうだった。


それでギリギリ、ベンゼルも助かった。

戻って来れるほどの、細い命綱が切れなかった。


しかし、敵として会い見えたなら相手を撃つ覚悟は、揺るがない。

それが、護衛対象になるとは思わなかった。


「あの砦の場所ってわかる?」

「それが…吹雪にあったので、発見された川のばしょしかわからないデス。」


(こんな声をしていたんだな。)


実際、温順しいだけじゃないだろう。あの腕前だ。当時でも手負の獣人を御すくらいできたかもな。

それをする気がなかったのは、大人の兵士を近づけないかった事からもそうか。


今も、部屋から脱走もしない。竜人ともうまくやっているようだ。彼女も変わったのだな。


(私の本分はあの時から変わらない。)


私は、セレナーデに属する。護衛の騎士として、護衛対象を守ろう。

この剣にかけて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=127584147&size=135
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ