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捕虜少女の行く先は、番(つがい)の腕の中?  作者: BBやっこ
第四幕 北へ
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5-報償の希望

子供が美味しく、上品な食事に意識を向けている頃

大人組は優雅に食事しながら、話しを進めていた。


模擬戦まで無事に済んだ慰労から、議長が2人に聞く。

「今回の褒賞の話だ。」


勝者への褒美もあるが、慰労の面もある模擬戦だ。

代表者として戦った2人に問いかける。

「何か希望はあるか?」


例年には…

酒、部屋の貸しきり、手配して欲しい物やサービスだ。

騎士が兵士の願望や欲望をある程度叶えてきた。


今回、大将戦での勝利を得たロードから聞くのが筋だろう。

「セリの周りの環境改善。」


番・至上主義に違わない願いだが、具体性に欠ける。

それを促せば続けた。


「セリの情報交換、噂を流すのでも良い。過ごしやすいようにしてくれ。」


過去、兵士からの圧力や暴言があった。人族であるセリへの一部の反感を鎮める目的で、模擬戦への参加を許可する形だった。

「それなら。手を回そう。」


仮市民の権利を与え保護者である議長は、要望を受け入れた。


カナンが横から

「番の認識不足もあるな。なんでだ?」


獣人の文化にある番<つがい>は、憧れでありトラブルの原因になる。その知識は種族でよく聞かせられるものという認識だったが?


ここの若年層は、番宣言しているセリへ危害を与えようとした。


竜人ロードは、騎士でも兵士でもない。賓客扱いのロードの番に手を出して無事で済んでいたのは、セリの性格が温厚だったからに尽きる。


「この城が半壊、いや氷漬けになってもおかしくない暴挙なのになあ?」


セリを見れば、もぐもぐ肉を咀嚼していた。

味わっているようで何より。


「このセリちゃんが、重要人物扱いされても不思議ではない筈が。

未だに、風当たりが強い理由ってある?」


敵対国として人族を嫌うより、他の原因があるとみた。

情報部として嗅ぎつけたのかもしれない。


「世代で王都に噂があってな。」

団長の話は、貴族の“番”問題。


人族との友好ムードを壊すものとなったキッカケ。


政治、貴族社会の現状。その情報が交わされる中

席の反対側では、子供たちが食事を楽しみ会話も交わしていた。


「それで足りるのか?」

「うん。おいしい。」


模擬戦とのセリの様子の違いに警戒が緩む。人族は幼く見えると聞くが、

9歳の弟を思い起こさせた。

(そういえば、一回食堂でも見たが食事量が少なかったな。)

獣人の新兵、食べ盛りの男達と比べれば病人食に見えるのかもしれない。


「弟のが倍食べるぞ。」

「アレンの事?」


「知っていたか。カトレア母上にもお会いしたのか?」

頷きながら、気づいたがライリーは会っていないのだろう。


「医療塔は行動範囲内だった。外部からは制限があるって聞く。」


「そうだが。カトレア様は、会いたくないのかもな。」


「会ってから決めれば良い。体調が良ければ暇してることも多い。」


体調を治す場であり、経過監察もある。セリは寝ていたから暇を持て余してはいなかった。


「カトレアさんは、暇だと言ってた。話し相手は多くて良いと思う。」


話終わると、会話が止まっていたのに気づく。


「しっかり話せるんだね?」

キースの言う通り、辿々しく話していた自覚がセリにはあった。


視線を外して呟いた。

「子供に見えないって言われたから。」


『その見た目で、侮られておけ』

『子供っぽくして見逃されるように』それが安全になる。

それを、止めただけ。



「セリちゃんは何かお願いはある?」


カナンの問いかけに、報奨なんだのの話は聞こえていたので望みはある。

王都の話になったので、聞こえていないフリはしていたが。



「兵士を人手として、貸して欲しい。北の砦に繋ぎをつけたい。

そろそろ、雪が降る日が少ない時期になるから。協力してくれる人と連絡を取りたい。


教会の場所がわかるはず。せめて方向が知りたい。」


そう願い出たのだった。



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