第四十三話 観覧席
地下訓練場の道筋を歩いていたが、階段を最後までまで降りず
途中で曲がった。
くねくねっと少し歩いたところで、広い司令室のような場所
に部隊の人だろう揃いの服装の人たちが動いていた。
私達に道を譲ってくれる。
ここで観戦するのか、大きいヴィジョンの魔導具を横目に
もっと奥に進んでいく。
(どこまで行くんだろうか?)
ドワーフの人が人魔導具の近くで何かやり取りしているのを見て、
前の人に、ベンゼルにぶつかりそうだったのを寸前で止まれた。
よそ見していたからだなと反省し、物珍しいものが気になるも前を見る。
小さな箱の隅に皆んなが寄った。
「行き止まり?」
扉が開くのか、そんな境目や装飾はなさそうだと観察していると
入ってきた方の扉が閉まる。
閉じ込められて、驚いて固まると無意識にロードに歩み寄った。
「動くぞ」
何かあるのだと周囲の変化に身構えていると、足元が動いた!
瞬間。ロードにくっつき振動に耐える。
生温い視線には気づかず、その感覚に耐える。
ロードに頭を撫でられた感触に顔を上げると、皆んな立ち止まっているが
足元が動いている。
「魔導具?」
下に視線を向けても床でしかないが、その下に勝手に動く仕組みがあるのだろう。
まだ慣れない揺れと振動に身を固くしていると
扉が開き、広い部屋にたどり着いた。
「観覧室だ」
パーティができそうな広さと、窓際らしい透明なところに、
豪華な椅子が2脚。
(後ろからでもわかる豪華さ。)
透明な板張りの向こうに、地下訓練場が見える。
「え。なんで?」
この角度から見える位置に、部屋があったら記憶しているのに。
以前行った地下訓練場に、こんな場所はなかった。
別の地下訓練場?
いや、位置は合っていると思う。
感覚頼りだけど、曲がった感覚と距離に歩いていた時の距離と大差ない?
と思いながらも、案内されるまま椅子に近づけば
「来たね?」
キース様と議長が先に来ていた。
「おはようございます」
と挨拶し、
「出番までゆっくりしてくれ」とお言葉をいただき、
少し離れたソファの席に座った。
ロードがピッタリつくが、座れた!
団体の準備をしているようで、
私に出番はこの後、整備の時間を取り
個人の模擬戦がはじまる。
対戦相手は、別室にいるようだ。
豪奢な部屋で、観戦もでき待つことになった。
シュルトの持たせてくれた弁当が気になりつつも大人しくしている。
カナンもロードものんびり構えていて
ちょっと悔しい気持ちが湧き起こるセリ。
出されたお茶を飲んで、乾いた喉を潤したのだった。




