第十九話 宣戦布告
「これで、まとまったのか?」
「そうだ。」
議長と団長の睨み合うような、やり取り。
「企画提案そして、申請書です。」
兎の獣人が、ピシッと形式的な動作で書類を渡した。
それを見た議長が苦々しく言う。
「ロードとカナンそれに、セリも参加を希望したのか?」
「ええ。全隊の合意です。」と決定事項を答えた。
いつの間にか、入ってるそうです。とセリは何の事かわからないもの
を見ている。
グッと不機嫌な寒さを感じた。
「ロード?」
驚いたセリは、ロードを宥めにかかる。
とりあえず、膝に乗っておいた。
「せ、セリへの依頼ですぅ。」
新たに書類が出された。
催し物への参加依頼だが、内容は
“模擬試合への参加”
「セリが出る義務は無さそうだけど?」
キースが横から疑問を出す。
兵士でもないセリの参加は、おかしいと言えるが。
「この城の外に出られる腕があれば、新兵との試合も可能かと。」
団長が、外に出たという実績逆手に取った。
もちろん、拒否もできるが
獣人の社会で暮らすのに、指名の決闘を断れるか?
セリはもちろん人間だが、微妙な問題だ。
獣人は、力を重んじる。
今回の催し物は
『
騎士団の演舞
兵士の団体戦
そして個人戦
』
城での親交を持とうとするもの
その招待に応じないのは、友好を断つと取られるか?
騎士側の態度が表明された
「個人戦の部で相手をして欲しい」
ロードは予想されていたが
セリまでと言うのには、申請を受け付けを不認可にしたい議長だった。
しかし、全隊の総意は重い。
催し物の性質上、依頼は出され人目に触れる。
セリに話は行き断った事に、住民や兵士は不満を持つだろう。
それは、議長にもキースの権威でも防げない。
「宣戦布告?」
好戦的なセリは、ロードの膝の中で堂々と聞く。
あまり格好はつかないが。
“受けて立とう”という態度で示す。
『売られた喧嘩は、ちゃんと買え』
と言われた通り、しっかり勝つつもりで
まずは態度から尊大にしてみた。
これは逃げ場はないし、試されている。
セリを保護している議長と、キースの権限で拒否するのが難しい段階の言葉と、強行しに来た騎士団長。
最高決定を下す議長の動きを封じて、依頼を出したのだろう。
今までの事があって、セリを害するのは悪手だ。
人の目のある場所で、“やり合おう”と言うお誘いと受け取った。
受けて立つ
それしか残されていないと感じ取ったセリの闘志を示したのだが。
「子供がすると可愛いだけだ」
と後でカナンに言われ、不貞腐れる事になる。
ロードもその件に関しては、誤魔化した。
そんな催事まで、30日後だった。




