第十六話 エルフの訪問
キースの話は『翌日はっきりする』と予告だけだった。
セリがウトウトしてロードの膝の中に居ても、酒の席は和やかに進んだ。
皆強い方なので、ほどほどにしておきたいシュルトはペースにつられないよう、料理を出したりしている。
「コレ美味しいのよ?」と楽しそうなので趣味なのか。
セリにも食べやすいものを勧めていた。
話題は、砦の事…ではなく、
洞窟きのこの話に、興味を持つキース。
国防上、必要な情報かと思うがプライベートの時間を割く気はなく。
「緊急じゃないし?」
との調子で、酒と肴を楽しんでいる。
ロードが甲斐甲斐しくセリを構うが…
「半分寝てんな。」
カナンの言う通り船を漕いでいるが、寝室に戻る気分ではなさそうなので
このままロードの側に居た。
ロードには、ご褒美な状況だ。
“懐かれている!”この喜びを噛み締めている
「セリちゃんが覚えてるか〜?」
カナンのチャチャも気にならない。
「俺は遊び相手になりたいんじゃない、頼られたいんだ」
それとは別に、
「はじめて食べた。」
庶民向け、酒飲み用で味はタンパク。そのかわり色々なものに合う。
キースの場合は庶民の菜物のがウケるらしい。
辛い物も、甘いものも好きなので
色々と用意して、夕食の代わりにするのだった。
うまい食べ物と旨い酒で和やかに過ごす夜。
ほどほどの時間で解散になった時、セリは夢の中だったが
なんとなく穏やかな時間を共有できたと思う。
その翌日、
ちょっと遅めに起きたセリはいつも朝と雰囲気が違うのを察する
従者やメイドが出入りしていたからだ。
この部屋は基本、人の出入りはない。
部屋の掃除には入っているそうだが、客室扱いで頼まない限りは入ってこない。
どうしたのか、ロードを見ると
「議長が来るんだ」と端的に答えた。
お部屋訪問であるため、準備が必要…
「椅子もないのか!嘆かわしいっ」
「セリのための部屋作りだ。」
「日頃の様子を見たいって話でショ?」
ロードの主張に、呆れ声のシュルトも援護に加わった。
軽く挨拶して、太った男と打ち合わせしている。
エルフでも座す仕様はあるので、このままになったが
椅子をご用意すると粘っている。
ロードが許可しなかったので、敷物を用意するようだ。
「あのお腹じゃ、座れないのかな?」
セリがボソリと溢した。
ロードは顔を逸らし、シュルトは少し吹いた。
邪念がないので、余計に辛辣だ。
その男は同席しないので、実際に座れないところは見れないがどうでもいい。
セリが朝食を食べ終わった頃に、ノックの音が響いた。
従者に扉を開けて入って来たのは
議長、アンドレアス。
部屋への訪問は、稀な事だ。
最高権力を持つが故、特定に肩入れしないようにしているが…
今回の件は、微妙な関係性があるので、招いてもらった。
「ほう。久しぶりに座するな。」
よっこらせと言うように座ると、途端にオジサンっぽさが増すが
そういえば300歳くらいだったと思い出す。
頭をよぎったのは、セリだけじゃなかっただろう。
「セリ、私の膝にも来るかい?」
ニッコリ顔は、好々爺のつもりだが、お兄さん見える、エルフの膝の上は
ロードがもちろん許さない。
セリも乗る気にはなれなかった。




