第十四話 ひと時の
セリの砦での記憶が呼び出される。
「奥の方は、土壁で洞窟。入りくんでた。その時、模様を見て…」
洞窟に被せるように砦が広がって、どんどん山から外に広がってできているって。」
セリが記憶をなぞるように話を続ける。
「確かに、一番外は新しくって、工事してた。」
ぽつり、ぽつりと覚えていることを言った。
そこで、ほとんど独りで過ごしている。
周囲の森で小型に魔物を狩って、食材になる物を探して巡って、たまにきる命令を聞いた。
寂しく、寒い記憶。
「苦労したなあ」ぐしゃっとセリの髪をかき回すカナン。
「酔ってる?」とカナンが同情と励ましているのをわかっていないセリは、泣き上戸扱いした。
「あれくらいで酔わねーよ」
横からぎゅうっとセリを抱きしめるのはロードで。
過去でも自分が居て、セリを悲しませないのにと思った。
ドワーフのビブルは、苦いものを飲み込むようにぐいっと酒をのんだ
彼なりの供養かもしれない。
「幼いのに苦労したなあ。何かあったら声をかけろ。手伝ったる!」
山とあったきのこを食べ尽くし、少しお土産をもらって別れた。
大抵、地下に居るらしいので、また会うこともあるだろう。
お土産のきのこを持つセリを、抱っこで運ぶロード。
それを見守る形のカナンでさっさと部屋に戻って来た。
新しい場所で、はじめての人に会い
思い出した記憶。
充分動き回った後、小腹も満たしたのでちょっとお疲れモードのセリだ。
しかし、甘い香りに顔を上げた。
部屋ではシュルトがおやつの仕上げをしていた。
酒を飲んだ話を聞いたシュルトが、にっがい薬草茶を出す
香りでもう苦い。
飲むの?という顔をセリもした。
有無を言わせないシュルトの顔に逃れられないと悟る。
任務中の飲酒は不味かった。覚悟して飲んだカナンに、無言で拍手。
今は苦悶しているほど、不味いらしい。
セリとロードには、フルーツティーだ。
ロードは任務中じゃないから、別。セリに嫌われそうな臭いは避けたい。
「それで、どうだったの?」
地下の訓練場の話をシュルトに話す。
きのこの事もだ。
シュルトの関心は、訓練場の設備の話からだった。
「あそこで行われる試合が観れるのヨ」
近々、模擬戦も見れる。
映像で映し出され、住民が見れる一大イベント。
そんな魔導具の話を聞きながらフルーツティを飲む。
話を聞く中、セリは砦での記憶を思い起こすことにした。
それには、情報を扱うカナンと人の事情に詳しいシュルトの協力を得られるか?
封印していた気持ちを定めた。
無意識に、セリは砦での気持ちを抑え込んでいたらしいと自覚する。
お腹は満たされ、暖かい部屋。
この安全な場所でなら記憶を紐解けると思った。
「聞いてほしい事がある」
セリの話しを聞きながら、情報を整理して細部を詰める2人。
ロードは椅子だったが、セリに与えるその安心感は、絶大だった。




