第十二話 地下栽培
「誰かいな?」
「ん?あ〜オッサン、オレが許可持ってるう」
カナンが遠くから声をかける。
「ああ、話に聞いとったわ。」
ドワーフの男性が、思い出したように言った。
「音がしてたから、誰ぞ勝手に入って遊んでるんかと」
誰も居ないはずの場所から音がしたので確認に来たようだ。
管理人の役目をしているらしい。
「ハァ……ハァ…」セリは肩で息をして整えている。
ロードがセリの観察をする。魔法を使わないで、あの動きはまあまあだ。
身体強化の魔法は無意識で使えているか?
バリアのような魔法で攻撃を防げるようになるかもしれない。
セリに話しかける前に、ドワーフの男が喋る。
「許可あんなら、いいわ。」
確認し終わったとばかりに、元いた部屋へ帰るらしい。
そこに、カナンが声をかけた
「何の匂い?」
セリも近くにきたが、何の事だがわからない。
「バターか?」
続いたロードは、何の匂いかも当てた。
セリにはわからなくても、2人は確信しているようだ。
「あんれぇバレないと思ったら。」
食べ物、しかも隠れてこっそり食べる
美味そうな匂い
こんなところで食べている物が何か気になった。
その狙われている目線に気づき、まあいいかといった態度で
「ホレ、食わせちゃるで来い。」
ドワーフの男は、道すがらビブルと名乗った。
筋肉質で小柄、髭がモジャモジャと生えている。
セリの知る“ドワーフ”、イメージ通りだった。
横穴を進むと、部屋が左右にある。物置きなのか、待機場所か。
迷わず進むドワーフのビブルに着いて行く。
天井が低めで、先程の場所より圧迫感があり、灯りも暗い。
簡易な竈門、でも広さもある調理場。
ここまでくればセリでも分かる香り
「焼きバターきのこ」
何故か、1人でこっそり。きのこをここで食べているらしい。
温めた酒、黒いタレと赤い辛子。
スライスされたきのこが整然と並び、炙たれていた跡がある。
「秘蔵のきのこだ。」
どこに?
と思わなくもない。
「え、もしかしてここで育ててる?」
カナンが当てずっぽうのようにいったが、
「まあな!」
正解だ。
「洞窟きのこだ。クセがないから、色んな味に合うし酒のつまみに最適だな!」
土魔法で隠しつつ、育てたと聞く。
「グスタフ坊を知っとるか!」
坊?という年齢なのか疑問に思いつつ
「まあ飲め」とカナンとロードが酒に口をつけている間に
セリはキノコの味見をする。辛いタレのはダメだった。
辛すぎて舌がびっくりする。
「洞窟作りがドワーフの得意だ」と自慢の中で、気になる話を聞くことになるのだった。
話の肴は、続々と炙られ、胃に消えて行く。
タンパクな味ながら、色んなタレに合う飽きない味に、食は進んだ。




