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幸福と王子の在り方についての考察(文化祭没脚本より)

作者: 夜桜 椋

没になったシナリオです。

母    ベッドに横たわっている

少女   その隣に座っている

少女   「お母さん、どうして王様はあんな像を作ったのかな。あれのせ

     いで私たちの生活は常に精いっぱいだよ。あれさえなければお医者さんに診てもらうこともでき

     たのに

     それに王子もどうしてあんな自分勝手なんだろう。国民がどれだけ必死で働いてもその分の税金

     を徴収してしまうんだもの」

母    「リリィ、王様はとても聡明な人だった。きっとなにか考えがあったんだよ。それに王子も少し

     わがままなだけできっと直ぐに考え直してくれるよ。もうしばらく……そうだね、あと一か月くら

     いしたら彼はきっと変わるはずだ」

リリィ  「私はそうは思えないけれど……」

   暗転

王子   「くそっ、まだ見つからないのか!」

従者A  「はい、国の総力を持って見張らせているのですが……」

王子   「はぁ、毎回毎回、お前らの『頑張ってます』アピールはうんざりなんだよ!努力したんなら、

     結果を見せろ。結果を!

     ……それで?今の被害状況は?」

従者B  「えーと、昨夜までに――」

王子   「今の状況を教えろ!」

従者B  「ひぃっ、夜明けと同時に見に行かせた騎士によりますと、昨日より更に、二個の宝石が持ち出

     されております。所謂王子の目玉であった部分です」

従者C  舞台へと走ってくる

     「王子、更なる調査によりますと、どうやら足元の金箔一枚が剥がれているそうです。劣化によ

     る可能性も考えられますが、場所から考えるに恐らくは同一人物による犯行だろうということで

     す」

王子   「チッ……そちらも定期的に確認しろ、なにかあったら直ぐに報告するように。

     そうだ、もし国の換金屋に宝石類を持ってくるやつがいたらここに連れてくるよう騎士どもに通

     達しろ。

     おい、リサ。数分したら部屋に水を持ってこい」

リサ   「承知いたしました」

王子   部屋へと戻って行く

   暗転

リサ   水を持って扉をノックする

     「失礼します」

王子   「入ってこい、鍵は開いてるはずだ」

リサ   扉を開けて机に水を置く

王子   「なぁ、俺が間違ってるのか?どうして誰も本気で像を守ろうとしないんだ!俺は必死で策を練

     っているのに!あれは俺の力の象徴なんだ!」

リサ   「先代の王が像を建てられたのは貴方に力を与える為ではありません。亡き貴方の父は貴方が大

     切ななにかに気付けることを祈ってその像を建てました。

     それは民衆も同じです。彼らは説明を受け、その意味を理解していた。しかし彼らはそれを拒否

     しなかった。それは彼らが王を信頼していたからです。貴方は信頼されていない。ただそれだけ

     のことです

     ……すみません、口を慎みます」

王子  「いや別にいい。ただ……少し一人で考えさせてくれ」

リサ  「かしこまりました、また用があればお呼びください」

    部屋を出る

   暗転

ナレーター それから数日が経過した

王子  外を眺める

リサ  王子の部屋のドアをノックして

    「王子、少女が一人いらっしゃいましたが、いかがいたしましょう」

王子  「フランスか?オーストリアか?」

リサ  「いえ、我が国の民でございます。どうしても伝えたいことがあるらしく。帰しましょうか?」

王子  「いや、中で待たせておけ。直ぐに行く」

リサ  「そのように」

   暗転

王子  部屋を出て椅子に座る

    「少女よ。いや頭は下げなくてもよい。名をなんと申す」

少女  「初めまして。リリィと申します」

王子  「リリィよ、何か伝えたいことがあると聞いたが」

リリィ 「私は王子にお礼を言いにやってまいりました

    私の家はとても裕福とは言えません。父が出稼ぎに行き、月初めに送られてくる給金でその月を凌

    いでいます

    ……二か月前のことでした、母が突然倒れたのは。しかし、我が家には母を診てもらうだけのお金が

    ありませんでした。私は何度も母に文句を言いました。王があんな像を立てなければ、追加の税を

    導入しなければ、せめてお医者さまにかかることはできたのにと

    しかしその度に母は言うのです、『王様を悪く言うのはやめなさい、王はとても聡明な人だ。きっ

    となにか考えがあったに違いない』と。私には母の言う意味が分かりませんでした

    一週間前のことです。ドアがこんこんとノックされました 。ドアを開けるとそこには誰もおらず、

    ただルビーが一つ置いてありました。私はすぐさまそれを換金しに行きました。罪悪感には苛まれ

    ましたが、しかし、それ以上に私は必死だったのです。 それから更に数日後のことです、王子の像

    から宝石が無くなっていると聞いたのは。私は直ぐに王子が何らかの手を使って宝石を私の下へと

    届けてくれたのだと思いました

    王子、本当にありがとうございます。ここにある金貨はお医者さんに払った後の残りの分です、返

    却したします」

王子  「それはもうお前のものだ。我が受け取ることは出来ない」

リリィ 「しかし……」

王子  「五月蠅い、どうしても返したいなら全額耳をそろえて返しに来い。その時に俺が覚えていたら受

    け取ってやる」

リリィ 「分かりました、本当にありがとうございます

    私、今になってようやく母の言っていたことが分かった気がします。貴方のお父さんは本当に聡明

    な人ですね」

    退場

リサ  「王子、よかったのですか。彼女を捕えなくて。彼女はきっと犯人探しに役立ちますよ」

王子  「もういい、どうせ今更犯人を見つけたところでどうにもならない

    それより教えてくれ。俺は正しいことをしたのか?」

リサ  「私は王ではありませんから判断を下すことはできません

    しかし、私個人の意見ですが、王子は最良ではないにせよ、とても素晴らしい選択をされたと思い

    ます」

王子  「それで良いんだ

    俺は父親の姿を見ていないからな、ただ民に信用してもらえるよう努力する。それだけだ

    それから水をくれないか、喉が渇いて仕方ない」

リサ  「そうですね、私も微力ながらお手伝いいたします

    ところで王は自らキッチンへ赴かれていましたよ」

王子  「はぁ、分かった。あとで取りに行くよ」



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