プロローグ 雨の中
羊毛フェルト作家さんにして、「もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた」の小説家、ひつじのはね様の子、Frail Guardianのお話しを書かせて頂きました。
大きなお耳に長い尻尾、羽の生えた幻獣さんです。お写真見て心奪われ、設定集を見て堪らなくなり、そして長編小説を書いてしまったという。以前は自分のHPでひっそりと載せていましたが、軽く手直ししこの度此方でも公開させて頂きました。(一応、ご本人に許可は取ってあります。いやほんと心広いよね(ノД`)・゜・。)まだ操作に不慣れで上げられていませんが、ご本人に掲載許可を頂いた画像も順次上げていきますので、皆さまどうぞお楽しみに。すんごく可愛いよ!
ひとまずはプロローグから。
それを見付けたのは薄暗い雨の中の草叢だった。
ベージュ色に茶色いスポットのある小動物。高い藪に紛れて気が付かなかったが、一度見つけてしまえばその明るい色の身体はこの灰色の景色の中良く映える。
その獣は身体を小刻みに震わせ、見るからに弱りきっていた。その場から動くことも出来ずただただ座り込んでおり、このまま放っておけば体温を奪われ力尽きるか他の動物に見つかり捕食されてしまうかは時間の問題である。
男がその獣に気が付く事ができたのは、獣の方が先に男の存在を察知し。まるで呼んでいるかの如くその猫の様な瞳で見つめ己の気配を放っていたからであった。
よく見るとその獣は何かを大事そうに抱えている。
雛だった。
否、雛と言って良いのかは分からない生き物だった。親であろうこの獣に翼が生えているのでそう評してはしまったが、まだ羽毛も形成されていないその姿は鳥というより猫の子の様だった。
だが猫とも言い切れないその動物の正体は、この国でFrail Guardianと呼ばれる生物であった。特徴的とも言える大きく張り出した耳に、枝の様にひょろ長い手足、折れてしまいそうな程頼りない首、そして本体と同じかそれ以上に長く太い尻尾と背中に「翼」。
親のFrail Guardianに庇う様に抱き抱えられている眼も開いていない赤子は、雨からは身を守れていても、放っておけばこのままではいずれ親子共々のたれ死んで仕舞うのは明白であった。
そんな状態の中、親のFrail Guardianは寒さと衰弱で体を震わせている以外には微動だにせず、必死な眼差しで此方を見据えていたのである。
「………………」
その眼を見詰め、ふと男が飼育種か、と呟いた。この男が「飼育種」と断言したのは親の持つ翼の大きさからざっと考えての事と、それからここら一帯は野生のFrail Guardianの生息地域ではない事が一番の理由だった。
ならば恐らく、このFrail Guardianも人間のHost Animalに遺棄されたものだろうと当たりをつけたのだ。希少種に該当する動物である筈なのだが、こういうものは後を絶たない。
その間中も、この親の獣は気力だけで男を睨め上げていた。何かを訴える様に、瞬きもせず。
その視線を黙って捉え、男は言った。
「……分かった」
親のFrail Guardianの耳が何かを察知したように微かに動いた。男が応えるように頷く。
「そいつは俺が預かる、だから安心しろ」
男がそう言うなり、親のFrail Guardianの身体は突然糸が切れたように力が抜けた。
そして眼を閉じぐったり首を草の上に横たえ、そのまま蝋燭の火でも消えていくように事切れてしまった。
「……………」
男はそれを見送ったあと手を伸ばし雛を抱き抱えて、雨に濡らさぬようその場から去っていったのだった。
ひつじのはね様
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