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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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春日局が病に、、、

「チサも以前より言うておって、お小さい時から鍛えて

 おかねばと申し何やら今までにない子育てを乳母に

 進言して成功しておるとか 先日 若君ご発熱

 お咳が続いた時もチサが冷たいお粥を差し上げた

 ところ、お食事が進んで日ごとお元気になられたと

 こなたの言う事 信じられねばお匙に問い召され」

「滅相もない なにゆえお局様のお言葉に不審を

 抱きましょうや。さりとてまことに不思議な事で

 ございまするな」 「初めはたわ言と耳を貸さなかった

こなたも、こう目の前で起こる事実を次々と知ら

 されては、、もう訳がわからなくなってのう」春日局は

顔を上げた。伊豆守も返答に困り、床の間の掛け軸に

目を据えている。ややあって局は小さくため息をつき

「チサをこのまま 上様のお側においていいもので

 あろうか」と 問うた。「と 言われるのは」

「今は他言するなと止めてあるが、この婆亡き後は

 誰にその事を漏らさぬとは限らぬ。チサが先に

 起こる事を知り得る等という噂が流れれば大奥は

 いや 大奥に限らず今の世はどうなると思いやるか

 幸い今の所は言う事がみな当たっていた。なれど

 チサの言う事これから先 全部当たるとは思えぬ」

と首を振る。伊豆守もそれには同感で深く頷いた。

「チサも自分で言うていたが、これから先の事

 すべてが分かるのでは無いという事じゃ

 自分が覚えている事だけが分かるのじゃと」

「では 何から何まで分かると言うのでは無いのですな」

「そのようじゃ そうして決っして悪いようには

 せぬから信じてくれとも言わぬが、心に留めて

 おいてほしいと申すのじゃ だが心配なのはチサが

 戒めを破りこの話を上様には申し上げぬかとゆう事

 そうなれば新しい物とか、新しい考え方には格別

 興味を持たれるご性分ゆえ まさかとは思うが

 チサの言う事鵜呑みにされて、言葉通りになさらぬ

 かと心配で貯まりませぬ。今まではそんな事

 考えても見なかったが、病みついてもう本復も

 為らぬ身体となってにわかに気になり出してこの

 2.3日は夜もう目覚めて考える事しばし、、、

 どうしたものであろうか」 ホッとため息をついて

局はうなだれる。「そのご心配はご無用と存じまするが

上様は 女.子供の言う事すべてを聞き入れるような

 お方ではございませぬ」 「こなたもそう思いまするが

万が一と言う事もある。上様はこの頃またとみにチサが

 お気に召している様子 こなたにもあれが一番可愛い

 等とぬけぬけと申されるのを見ていると万が一つにも

 心配でならぬ」 「さりとて今さらおチサ様をどうする

という事もできないではありませぬか。まさかお局様は

 亡き者にせよと、、」 「それも考えた事がある」

「お局様、、、」 「しかしそこまで踏み切れぬ。今まで

 チサの言ってくれた事 徳川の為良かれという事

 ばかり、悪しき事は言いませなんだ。その上に、、

 情にも引かれては為らぬと思いもすれどあのチサは

 母にでも尽くすように孝行してくれる」

「寝ずの番をなさったとか 上様よりお聞きして

 おります」 「そのような事まで上様は申されるのか」

「この伊豆にのみでござればご懸念なさいますな」

「それにしても一人の女のみ 心を奪われては」と

局は歎くが伊豆守には頷けぬ。


続く。

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