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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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春日局が病に、、、

確かに母に甘えることなく、あの堅苦しい春日局に

かしづかれて育ったなら寂しい少年時代であった事と

察っせられる。そうしてその朝 チサは局に二の丸に

行くので上様のお渡り お出迎えは休ませてほしいと

言いおいて竹千代の朝ご飯に間に合うようにと急いだ。

もちろん薬は用意して、、、二の丸に着くと

もう朝食は用意してあり、冷ましてあったがチサは

良く調べるふりをして、またも上手く薬を紛れ混ます。

そうして医師がまだ来ていないのを幸い 部屋の

襖を思い切り開け放して新しい空気を入れた。

佐和やお楽 女中達もびっくりしたがチサはにっこり

笑って「こうして 時には新しい風を入れる事が

身体に良いのですよ。何もずっと開け放しには

 しなくていいの。ほら お部屋の中が気持ち良く

 なったでしょう」と 言って襖を閉める。

「まぁ 本当に、、」と お楽の方 今まで薬の匂いと

火鉢の熱で澱んでいた部屋の空気が、一気に爽やかに

なった。その中で竹千代はポッカリと眼を覚ました。

「昨夜はいかがでしたか」 ずっと付き添っていた

佐和に聞くと「はい お咳の方は昨日よりずっと

少なくなって、少しお元気になられたように

 お見受けしました」と 嬉しそうに答えた。

「そうですか よかったですねぇ はい ほ~ら若君

 ご飯ですよ~」と チサ 今朝も保育士さん。

竹千代も機嫌良く食べ終わった所に医師が診察に

来た。「ほう 今朝も残さず召し上がりましたか。

まことに結構な事でございまするな。お熱も昨夜

 より下がっておいでです。食事を召し上がれる

 のが、良くなって来ている証拠です」と医師

「本当にお熱も下がりましたか」と 嬉しそうなお楽と

佐和 「お薬湯が良く効いたのでしょう」と チサも

医師を持ち上げておく。まんざらでも無い様子で

「では 後しばらくしてから差し上げましょう。

 見ればお咳の方も落ち着いているようでございます

 れば」やれやれという感じであった。チサが飲ませた

薬が効いているとは夢にも知らない。

そんな事があった頃 大奥では家光が、局達出迎えの

中にチサがいない事に気づき、お仏間礼拝の後の

襖外で「チサはどうした」 「二の丸に参っております」

「何っ 二の丸に この朝にか」 「はい 若君は

あのチサに良く懐かれて、お食事もチサが差し上げる

 と良くお食べになるから、おチサ様をしばらくこちらに

 と今朝 お楽に泣き付かれてございます」と局

そう 今朝チサが二の丸に向かう入れ違いにお楽の

書状が届いていた。「さようか 竹千代がチサになぁ」

「はい もともとチサとお楽は仲良くしておりました。

 母親が良いと思う人には若君も懐かれるのかと」

「さもあろう。チサはいつでもともと辺りを明るく

 してくれる」と またおノロケ いつもならチサに

甘すぎると苦言を呈する局も大事なお世継ぎの事

とて強くは言えない。竹千代はその後 順調に回復し

百日咳の一件は大事に至らずに済んだ。

お楽の方はじめ 家光 局もホッとひと息であった。

その気の緩みに付け込んだように病魔が忍び寄り

晩春のある日 局は大奥を下がり代官町の私邸で

病みつくようになった。


続く。

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