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題名のない物語  作者: 五木カフィ
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竹千代と百日咳

竹千代は小さな布団に起き上がり激しく咳込んでおり

佐和とお楽がずっとその背を撫でていた。チサが入って

行くと「ああ おチサ様 やっと来て下さったの」と

嬉しそうなお楽の声 「お方様 遅くなってすみません」

平伏するチサにお楽は駆け寄らんばかりに近よって

手を取り若君の側へといざなった。

「朝から咳がだんだん酷くなってきて、お熱もあるし

 咳込まれるとお苦しそうで」と 涙ぐむ。チサは

側に控える医師に 「これは百日咳ではありませんか」と

問うて見た。「百日咳と申しますと」医師は尋ね返す。

チサは困った。そんなに医学に詳しい訳では無い。

「長い間 咳が続くので私の国元ではそう言うので、、、

 咳は体力を奪いますし、、、」と 言葉をにごす。

「お食事は召し上がりますか」と 佐和に問うと

「はい ほんの少し 柔らかいお粥を、、でも

 咳込まれるとせっかく食べた物も吐いてしまわれたり

 して難儀致しております」 佐和も心労の為かやつれて

見える。竹千代の様子を見ていると、甥とダブりこれは

百日咳だとチサは確信した。だが 医師にウイルスや

黴菌と言っても分からないだろうし、どうしたらいいの

だろう。このままでは痰が絡み呼吸困難になる恐れも

ある。この時代に抗生物質はないし、、、

その時 天啓のようにひらめいた事がある。

(そうだ風邪薬 カプセルの、、ハンドバッグに入ってる

 お母さんが持たせてくれた風邪薬には抗生物質の

 入っているのがあるわ)そう思い付くと心が晴れた。

あのカプセル一粒を3回くらいに分けて飲ませたら

どうだろう。小さい身体 大人の量では危ない。

(だけど 大丈夫かしら)チサは思う。大事な大事な

竹千代の身体 薬でもしもの事があったら、、、

その時また一段と激しく咳込み、顔をまっ赤にして

いかにも苦しそう 医師もお楽達もなす術はない。

チサは決心した。後世に家綱は存在したのだから死ぬと

いう事は有るまい。ただ どうして飲ませるかという事

チサが持って来る新しい薬を信用して飲ませること等

医師は絶対にしないだろう。それは局に頼んでも

駄目だと思う。薬は命にかかわるものだから、、、

(何かにこっそり混ぜて、、そうだ お粥がいい)

なんとか人目につかず入れる事が出来たら、、、

「次のお食事はいつ頃の予定ですか」 「あと半刻も

したらと思っております。少しでも召し上がって

 いただかないと」と 答える佐和

「では 前に教えたよう野菜を煮た汁で少しだけ

 塩味を強めにしてお粥を作って下さいますか。

 そうしてお茶も多めに用意して下さい。私がお食べ

 させてもよろしいでしょうか」と チサ 側に居る

医師に尋ねる。「は それは」医師が渋い顔をすると

「おチサ様 そうして下され。若君もおチサ様には

 良う懐かれておいでですし、お頼み申します」とお楽

御生母の言葉には医師も否やとは言えなかった。


続く。

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